koichang’s blog

詩のノーベル賞を目指す、本を出さない、自由な詩人。

イラスト詩「幼馴染はアルパカ」

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俺は少年漫画が嫌いだった。
まず、静電気を帯びたようなあの髪型が気に入らない。
​ジョー・ヤブキはよしとしても(?)​

そいつがしかも饒舌だったら―――。


仕事の基本はメモを取ること、
やべーよ、本当。

日常って不思議なリズムだと思う。
淡い憎しみが燃え上がる、
お気に入りのボールペンも、
都心から少し離れた街に構えた、
古くも新しくもない3LDKの両親の家も。
閑静な住宅街と都心の隅っこが交差する、
退屈な街。
眼を閉じて魔法の呪文を唱えたくなるコーヒー屋どころか、
茶店もない。
腕を組んだ写真がウザい、
胃袋の重石になるラーメン屋もない。
メンタル崩して、海外に失踪したくなる、
タイとかマレーシアとか。
密入国したい、パンダと遊びながら船で。

―――違う、俺は今何の話をしているのだ。
数メートルにわたって提示された広告、
誰もが知っている少年漫画のキャラクター、
踊るポップ広告体の愛さながらに、
飛び出し絵している。
見開き3D。

「寒い時の芋虫みたいだな」
と言ったら怒られるだろうか、どうだろうか。
給紙トレイは優しく開けたい、
おらとか、蹴ってはいけない。


・・・・・・音信不通、閑話休題

小鳥たちまどろむ生きた森で、
深呼吸しながら言いたい。

、、
死ね。


大事な仲間と苦境を乗り越え逆転勝利、
フルスロットルマウンテンリバー(?)・・・・・・。
草。艸。
汗臭の、展開。
汗は握らない、手汗スゴッとなるだけ(?)
草となる、放牧中のアルパカが食べる。
アルパカって放牧してるのかな、
知らないけど多分。
もう、肉らしくてたまらない。
憎くて、煮括って、つるしあげたい気持ちでいっぱいだ、
気が付くと煮干しだ。
笑顔なんか押し付けてくるなよ。
百万人方の紋切型の正義とかで、
人類のことをわかった気になるなよ。

少年漫画読みながら、停電する。
俺はずっと充電中、LOVE充電してほしい。
さようなら、思春期、
いっとくけど健康診断と防災訓練と朝礼を忘れるなよ。

誰もいない二階から足音がしたり、
ナイス、雨に濡れた砂。
物置の鍵が壊れて開かなかったり、
もっとナイス、婚礼の祭壇に立てるレベル。
自分と違う髪色の抜け毛が頻繁に落ちていたり、
ベリーナイス、けだるげ、魚の死んだ眼。
とある部屋の壁にたくさんの拳型の跡がある
ベリベリナイス、窓拭きしよう、
何も変わらない、
そして心には何も届かない。
心理的瑕疵のデパート、
大人になるってそういうことじゃんか、って言いたくなる。

黄色い声援。
ブリーフ王子。
ハンカチがブリーフだったら、
ビックバーガーでも、よかったのに。
やっぱりダブルバーガーだって思ってました、
トリプルバーガーですよね、日本の大投手は。


コンビニの雑誌コーナーの一角にある、漫画や新書。
縄張りという名のPR。
ずらずらと並んで圧倒する。
バイオレンス、ゴルゴ。
超有名漫画が、違法地帯Xとなり、
放送事故みたいなファンタジーに思えてくる。
全体ミーティング。
議事録スマホ録。AI自動書き起こし。
社内サーバー共有フォルダ。

そして時の作用でかすかに揺れる、
砂地の水底。
トルコ行進曲の替え歌で、
オワタの言葉にのせて永遠に歌い続けて欲しいボカロ。
グーグルマップに載ってない場所、
絶対に道に迷う場所。
そして、ぼっちの言い訳のような響きをのせて、
オワタの言葉にのせて永遠に歌い続けて欲しいボカロ。
プレゼントしたいんだ、
近くの激安スーパーで買った冷凍食品。
愛をこめてオワター!

ごり押しは基本。
でもそれ関係あった?
動画用の字幕的チリツモの広告案件、
霜の降りた矢車菊


・・・・・・。
・・・・・・。

―――やぐるま、グギッ(?)


非日常を求め、現実に幻想的なオブラートを被せ、
死に物狂いで夢を見る。
眼は二つの噴火口、声も言葉も孤独な航海者。
鬱屈してる。
壊れそうな一歩手前の高速マシーン。

そんな俺を見かねたのか、
乳 首まっくろであそこも真っ黒になりつつある、
女というには女していない幼馴染が、
「次の休日、夕方、買い物を手伝って欲しい」
・・・・・・とメッセージを送ってきた。


なんだろうね、このヒト。
かましいよね、このヒト(?)

普通に嫌だけど。
ごめん普通にお前なんかと行きたくないけど。
とか―――送ったら、
電話をゴリゴリにかけてバキバキのベキベキ、
驚いたというか、こわかったです(?)
着信百かぞえた。

まじごめんってLINEで真夜中送った。
冗談通じなさすぎ(?)

心配してるんだろう、
そもそも前の仕事で過労で倒れて、
自宅でもできる仕事に切り替えた。
給料は実を言うと前よりもいい。
でも、前よりもずっと外に出なくなった。
両親もいないわけだし、
お袋さんから何か聞いたのかな。
でもまあ、
通勤もネクタイも誰かと会うのも嫌だった。

リモートワークが普及したこのご時世、
連絡なんてメールとチャットで十分。
―――これはクールと言うべきか、
人間もついに末期と言うべきか。

高等遊民の名を欲しいままにする、
超エリートニートに立候補できるレベル。
いま思えば、入社初日の自己紹介も、
さらにさかのぼって面接すらも、何だか妙に退屈で、
近い将来のすべてを暗示していた気がする。
私服OK髪型自由、
就業時間は午前八時から十七時時まで。
年間休日百二十日、週休二日制
交通費支給あり。駅から徒歩十五分。
未経験者歓迎。いうまでもなく、経験者も歓迎。
オフィスの中では常にけたたましい声と電話が鳴り続ける。
オンライン会議用のPC。
傷とシミだらけの机のある会議室。

―――会社って何だったんだろう、
思い出せな―――い・・・・・・。


集合場所から三十分が経った頃、幼馴染が現れた。
スカートの下にパンツはいて、
こいつ、露出狂か、ブラジャーしていない。
徐々にしみでてくる、ずぼらさ。
都忘れならぬ、女忘れ。
演歌の歌にチョイス(?)
そしていきなり手を挙げて、馬鹿丸出しで、
「おっす」
「おっすじゃねえ、まず謝れ」

―――孫悟空ネタ(?)

「えー、パワハラで訴えてもいいですか?
いい弁護士知ってるんですよね(?)」
「ここは会社じゃないし、まず、遅刻したら謝るのが筋だ」
「ここの通りの名前知らないな、あ、それとも、
背中に彫り物をいれるところの?」

、、、、、、、
その筋じゃねえ。

「で、どうして遅れたんだよ」
「パンツ選んでた」
「嘘つけ」
「違うんだ、もう一度いわせてほしい、
ちんこをはやしたんだ、それでパンツ選んでた(?)」

言い直した方が、破壊的に説明を拒んでるのは、
・・・・・・何故か(?)

マカオで?」
「そう、マカオで(?)」

・・・・・・いつになったら真面目に話してくれるのだろう。
いや付き合ってるお前も大概だろうって話だけど。

「実は行こうと思ってた店が潰れて、
違う店できてないかと思って探してたら、
時間だけが―――フェードアウト、
その、俺に免じて許してやってくれよな(?)」

前髪を揺さぶりながら、二枚目。
顔は実は結構可愛いんだよ、どぐされじゃなかったら、
普通に結婚してると思うね(?)
でもね、そういう台詞は、宝塚じゃなかったら許されないからね。
あと、お前の話を誰かの話のようにしたからって、
お前の遅刻が雲散霧消するわけがないからな。

「ねえ、ビデオデッキってあった?」
「あ、家にか?」
「そう」
「どうだろう、あったような気もするし、
なかったような気もする」
「ケンポウショウ?」
「どうでもいいからだよ、歳を取った扱いとか、
なめたことばっかりしていると、
人間関係悪くなるぞ」
「大丈夫、もういないから」

更地の人間関係。
パチンコ屋の駐車場ぐらいにはなれるだろうか。
タイトルは、
<おそらく週刊 清算系女子の青酸カリ的日常(仮題)>
―――売れないだろうな、韻踏んでも(?)

街の通りにはゾンビが群がっているように見えた。
そうだ、集団疎開とか、お祭りかと思う。どちらにしても、戦争だ。
彼女が言う、ビデオテープで映画を観るという体験を、
どうしても味わいたかったらしい。
じゃあ、ラジオ聞け。
安上がりだし、と言ったら殴られるな、しかし。

お互いのことを一ミリメートルほど思い出す。
ほんの少しだけ気持ちが良くなった気もするが、
本当の居場所はここではない、という感情が五分後の俺を支配する。

「で、何探してたんだよ」
「んー。本当に欲しいものって、
えてして手に入らないからね」
禅問答だ。あるいは哲学者だ。
―――いっとくけど、そんなの普通だ。

、、 、、、、、、、、、、、、
ただ、俺の質問に答える気がない―――という(?)


俺はスマートフォンを取り出し、
彼女との一瞬の刹那的な交流に終止符を打つように、
ネトゲだ、課金アイテム!」
とか言ったら普通に背中蹴られた。
「嘘だよ、してない」
「いいんだよ、しても―――クズって呼ばせてね」

しかし会話が弾んでいるんだか、擦れ違っているんだかわからない。
何だろうこの他人の駐車場に車停めても、
ペナルティなしみたいな痛さ(?)
まるで他人のパソコンを遠隔操作だze(?)
昔買った腕時計どこ失くしちゃったんだろうなーって、
気が付いたら片方だけ失くしてた靴下見つけて喜んでる、
あ、卒アルだ、昔愛読してた漫画だ、
そういうゴールテープ感覚。

そしてババアみたいなことを言う。
あと、どうでもいいけど、服着ろよ、
世間様に申し訳ないから代弁して言うけど、乳 首見えてんぞ(?)
あ、見えた、これ、見せ乳 首なんだよね(?)

「今日は私なりのノスタルジーに浸ることにする、
ユウジョー(?)」
「浸れ浸れ、フック貫通サスペンションとか、
シャム化人間しようぜ」

この単語がわかる時点で、幼馴染だ。
おいおい、ノスタルジーだ(?)


バスが来るのがその時見えた。
何だろうね、あのローカル感満載の、古臭いバスは。
あのまま、終点まで行きたかった子供時代は帰らない。

「・・・・・・あ、バス来てる、家、帰っちゃおっか、
両親が亡くなったあたしの家に」
「死んだのか?」
「何言ってんの、お前の家だよ」

軽いジョークだな、ふははは・・・・・・。
―――あとで、料理作ってやろう、
唐辛子スペシャルだ(?)

「いっとくけど、俺、日本の秘境の大麻畑だから」

タイミング悪いことに、
警察がたまたま通りかかって、ジロッとこっちを見た。
劇画調の顔に見えた。
すみません、冗談です。

「馬鹿だあ、こいつ、コカインとか、マジックマッシュルームとか、
LSDとか、ヘロインとか言ってるよ」


どうしてかミステリ本の、
犯行現場の紹介ページを思い出した。

「そこまでは―――言ってない」

でもそんな言葉が眼につく。
昔ながらのロマンとは違う、
下世話な好奇心をくすぐる見出しばかりが表紙を飾っている、
街での日々が俺を変えてしまったのだろう。
ともあれ、バスに乗る。
よいしょ、と座席に腰を下ろしながら―――。

「ていうか、買い物って言ってなかったか?
家じゃねえだろ、いいのかよ」
「―――そんなこと言ったっけ?」
「ケンポウショウか?」

肩を殴ってきますからね、このヒト(?)
ケニアだよ、このヒト(?)
ギアナ高地に修行に行っちゃうよ(?)

「お前なあ、いくら幼馴染でも、
そんなことを言ったら殴られるぞ」
「お前さっき言ったじゃねえか」
「ひどいよ、こんなに仲良くしたがってるのに、
パチンコ屋に行く、タバコにお酒もやる、
そのうえ、ネトゲもやる幼馴染のために、
神様のような私が手を差し伸べてやってあげているのに・・・・・・」

聞けば聞くほどBADステータス、
ただその大半、嘘である。
パチンコ屋に行かないし、ネトゲもしない。
あと、お前は絶対に神様という形容詞はつかない。

「おまえ、ひどいな」
「やさしさ」


―――やさしさって、
色んな使われ方をされている。

「独り言の多いぼけ老人に、
中学生裏 ビデオはやめておけって言いたかったんだ」
「やめておけって何さっきからめちゃくちゃなワード、
ぶっこんできてんだ」
「大好物だろ」
「食えねえよ」
「・・・・・・食わず嫌いはよくないぜ」

でも、と真面目な顔をした。
「こっち戻ってきてんだったら、
声ぐらいかけろよ。
淋しいじゃないか」

何だ、そのツンデレ台詞(?)
あと、何ですか、そのちょっと拗ねたような表情。

「違うんです、買い物を忘れたわけじゃないんです、
その、呪いにかかったように頭の中で消しゴムがかかって、
次の瞬間―――」
「馬鹿になる、と」
「殴っていい?」

バスから、夕方の景色を眺める。
でも考えてみると、買い物に夕方ってまず有り得ないよな、
おそらく最初から買い物をしてくる腹積もりだったのだろう。
俺は、水草とか流木だけいれて魚は入れない水槽を思い出す。
ネイチャーアクアリウム
グループチャット。
シフトキーとコントロールとNを押して、呼びたい人を、インバイトして、
チェックつけたら、招待ボタンをクリック。
三〇メートル先、右方向です。
イヤフォンからAIアシスタントの道案内。

そろそろ家だなと思って小銭を出そうと、
財布を取り出したら、幼馴染が言う。
あの日のバス停。


「でもさ、本当にお前は最悪だよ、
友達でもこれは怒るね、
幼馴染だから許してやろうかって思いながら、
わざと待たせてやったけど(?)
―――毎年、ちゃんと連絡ぐらい、しろ」
「ちょっと聞き捨てならない台詞があったんだけど」

幼馴染は笑う。
けらけらと笑っている声を聞いていたら、
何だか少年時代の光景が不意に戻ってきた。
「気のせい」
「でも、悪かったよ、
ただ、オトナにならなくちゃいけなかったからな」
「まあいいさ、スーパーでハーゲンダッツ買って、
それから、ステーキおごってもらって、
ラーメン屋おごってもらえればそれで(?)」


人がちょっと反省していいことを言おうとした矢先に、
その鼻っ柱折りまくる、幼馴染。
でも久しぶりに見たかもしれない、バスの中の夕陽。


「しかし私も驚いたね、
三十になっても結婚しないなんて、
どう考えても私にベタぼれだったんだなって(?)」


何言ってくれちゃってんのてんぷら(?)
婚期逃しただけですけど、

最初からその路線は諸事情で閉鎖されてましたけど(?)

そして隣にいるアルパカ、違う、レッドアルパカ(?)
違う違う、ブルーアルパカ(?)
ガウチガウチガウ、イエロオオオオアルパカ(?)


​「(泣きたいほど平和だな)」​


   ​、、、、、、、​
―――​街がもうすぐ夜。​
ブラックアルパカシンフォニーが、
聞こえてくる、郊外(?)