一目ぼれだった。
自分の理想がそこにいると思えた。
そして僕等は話した。
名前を知った。
色んな話題を話した。
そして―――は、死んだ。
ゲームのリセットボタンを押した。
もう一度スタートした。
*
・・・・・・何かに操られているような気がする、
そして君がそれを知る度に、その疑惑や疑念は、
堪えきれないほど、膨れ上がる。
『壜と蓋のサイズ』が合わない・・・。
*
地毛が真っ白になっている僕の髪。
プラチナプロンドみたいだろ、と友達に言う。
ホッキョクグマみたいだ、と友達に言う。
―――ここは高校の教室、転校生が来る・・。
*
一目ぼれだった。
自分の理想がそこにいると思えた。
そして僕等は話した。
名前を知った。
色んな話題を話した。
そして―――は、
夜明けの鶏小屋のように、
発狂している・・・。
―――と、―――と、言った。
水のない水族館のように、
空っぽのプールのように、
―――は、叫んだ。
何かが間違っていた。
、、、、、、、、、、
選択肢を間違えたんだ・・・・・・。
[プロバティ]と言った。
[ステータス]と言った。
攻略本はなかった、
チャート図は断ち切られていた。
そして包丁で僕を刺した。
満面の笑みで・・・・・・。
「これであなたは、わたしだけのもの・・・」
ゲームのリセットボタンを押した。
もう一度スタートした。
*
キリコの中の絵の情景が、超現実主義を引き寄せ、
いつのまにか、3Dゲームの中に迷い͡こむ。
迷路的な廊下のコーナー、
階段を見る度にブレる視界・・・・・・。
、、、、、、、、、、、
騙し絵みたいな気がする。
*
水泳の授業で、
その背中の刺されたような傷、何?
と、友達に聞かれる。
、、、、、、、、、、、
強張った顔を俯かせると―――。
子供の頃、海を泳いでいて、
鮫に噛まれたらしいんだ、ということにしている。
本当は―――本当は―――。
僕にもよくわからない・・・・・・。
、、、、、、、、、、、
教師が転校生を紹介する。
*
心温まる場面なのに、
どうしてか、心の奥が、
死後硬直でも起こしたように、
硬くこわばっている。
空気を吸い込んでいると、
何故か重たく澱んでいる気がする。
まるでつまらないテレビでも、
見ているような気がする。
する―――んだ・・・。
する―――んだ・・・・・・。
ああ、どうしてなんだ―――ろう・・・。
ネジレテユク、
ネジレテユク.......
*
一目ぼれだった。
自分の理想がそこにいると思えた。
そして僕等は話した。
名前を知った。
色んな話題を話した。
そして―――は、
ある日の夕方、
「覚えてるのよ―――のことは」と言った。
そして、いきなり僕に手錠をして、
服を脱がせて、一冊も本のない図書館のように、
あるいは人が一人もいない無人島のように、
僕をソファーやシャンデリアにした。
土台を失ってしまった塔は、
ピサの斜塔になることしかできない。
―――は、(かた)くて、気持ちいい・・。
―――は、(かた)くて、気持ちいい・・。
そして―――は、
二人仲良く飛び降り自殺した。
ゲームのリセットボタンを押した。
もう一度スタートした。
*
リセット、スタート。
リセット、スタート。
―――静物画のような場面、
孤独が忍び入っていく・・・。
潰れた肉や骨が再生してゆく。
血が再び肉体に再生してゆく。
*
僕は神様に呪われているのだろうか?
運命はいつもいつも同じことを繰り返す、
何回やっても死ぬことになる。
いや―――もう何百回、何千回、
繰返しているのかも正直言うとわからない。
、、、、、 、、、、、、、、、
鏡を見る度、記憶は失われてゆく。
「・・・・・・が、いる」
僕はついに、自分の名前さえ忘れてしまった。
*
一目ぼれだった―――のだろうか、
自分の理想がそこにいると思えた―――のだろうか。
そして僕等は話した―――のだろうか。
名前を知った―――のだろうか。
色んな話題を話した―――のだろうか。
―――は、キスした。
―――は、セックスした。
―――は・・・・・・。
名前が思い出せない、
(というか、もはや、何故こんなことをしているのかも、
どんな意味があるのかさえもわからない―――)
偏頭痛―――ぎりぎりと圧迫する、万力・・。
その日がやって来る。
―――は、包丁を持っている。
―――は、僕の名前である―――を、
知らない・・・・・・。
「止めろ!」
―――は、名前が思い出せない。
「こんなの―――らしくない」
―――は、名前が思い出せない。
バグってる。
壊れてる。
狂ってる。
イカれてる。
キチガイだ。
ラリってる。
だから僕はゲームのリセットボタンを押した。
もうスタートボタンを押す気になれなかった。
、、、、、、、、、、、、、、、、、
糞ゲーなんかに付き合っていられるか・・・。
*
ちりっと、した。
脳味噌の何処かで蛆がわいてる。
ホントウニアイシテイタノハアナタ...
*
でも次の瞬間、
一目ぼれした。
そしてその瞳をくりぬかれ、
身体に釘を打たれ、
窓へと飛び降りていた―――。
―――は、名前が思い出せない。
繰返し続ける・・・。
繰返し続ける・・・・・・。
*
生命の根源が出現した時のダイナミズムを体感するための、
ダイブ型のヴァーチャルリアリティという謳い文句。
―――製作者が、奇人や狂人の類いだと気付いたころには、
数万人規模の被害が出ていた・・。
―――は、『間違った場所』を『正しく機能』させる。
*
救命ボートの上から沈んでいく船を眺めているような日々、
最初にまず彼女が現れる。
そしてゆっくりと継ぎ目もなく過ぎてゆく。
けれど、次第に昨日と今日と明日の区別がつかない。
碇を失った船みたいにあてもなく彷徨いだせば、
やがてその日はやって来る。
―――は、名前が思い出せない、
眼の前にいる、―――を、見ていた。
―――もまた、名前が思い出せない、
眼の前にいる、―――を、見ていた。
二人は、穏やかな泥の中から目覚めた、
ロミオとジュリエット・・。
けして救われることもなく、
けして許されることもなく、
ただひどくリアルなまがいものの愛を見つめる。
余計に飾りすぎたものが素直や正直さだと信じながら、
一歩、また一歩無限輪廻回廊の、
ステージ・ドアの先へと踏み出す。
裏も表もなく、右も左もない。
空間がねじれていて、また元通りになる。
―――は、泣いている。
―――は、引き出しや、意味のないがらくた。
*
壊れなければ見つからない、
僕等が本当にすべきこと・・・・・・・。
おぞましくて美しい―――は、
この世界に存在しない名前・・・・・。