かもちゃん、教育実習すれば
かもちゃんが中学校に、
教育実習生というタスキをして何故かやって来た。
担任の先生につれられて、来た。
教育実習生のかもちゃんだ、と真面目に紹介された。
いや鳥じゃん、大学行ってないじゃん、
とは誰も面食らって言えずに、かもちゃんが挨拶をする段。
―――いきなりのC調、
いや、胃腸にかけて、E調(?)
「かもちゃん、朝から緊張してピリピリしていたダロ、
だから、舌を噛んだり、コミュニケーションがまったく駄目でも、
漢字を書き間違えても、許して下さいダロ。
ああ、人生に起伏がなくて、消化試合のような人生を過ごして、
鬱屈とした感情、リアルが充実している人々への羨望と嫉妬ダロ(?)
その感情を抑圧するために、他人の小馬鹿にするポイントをつけ、
今日もジョブチェンジアレグロニートに明け暮れるダロ(?)」
―――嘘だった。
何しろ、かもちゃんは、そう言った後に、
いきなりお菓子をパクッと食べていた。
緊張してピリピリしていたら咽喉に物が通らない。
「これからきっと教育実習名物の、
顧問教官のいびりの時間が始まりますダロ(?)
ついにはわいせつ行為に至ることもあるダロ、
そして生徒からは不幸の手紙にシネシネビーム(?)
仕事が終われば、町の小さな酒場で、
美空ひばりの最後の食事のように、
焼酎とチャーシューメン、ダロ(?)
自己暗示によって内面化、
従順な身体を組織化して満員電車に乗って仕事、
そして自分が教師に向いていないと気付いて、
ストレスと孤独に打ちひしがれながら、
別の道に行きたくなるダロ―――ああ、どうして、
あの時、鳥になっておかなかったダロ(?)」
、、、
鳥です(?)
みんな笑った。
担任の先生も、すごい顔をして笑いを堪えていた。
自称緊張していると言い張る鳥の演説はさらに続いた。
当たり前だけど、一回も噛んでいない。
お喋り好きな鳥のなめらかな調子は教室中に響き、
少し早口であるのにもかかわらず抜群に聞き心地がいい。
窓には、何故か雀たちが来ていた。
「教育実習では無断欠勤、無断遅刻をしないことを心掛け、
出勤時間、授業開始時間を厳守し、日誌や記録を、
担当教員に毎日提出し、校内では規範となり携帯電話を使用せず、
校内で喫煙をしないダロ、
ああ、こうなったら教科書やテストを羊のように食べる、
生徒を食べるしかないダロ(?)」
とかなんとか卑屈な道化師演じている傍から、
プカアと、煙草を喫い始めた(?)
二重人格の鳥(?)
煙を吐き出しながら、すごくいい顔をしていた(?)
さらには、ビールを取り出し、ゴッゴッと飲み始めた。
アウトだった―――それ、完璧にアウト!
しかし、担任の先生はそれを見ても、何も言わなかった。
それどころか、灰皿を手に持っていた。
―――ものすごい、圧力が、かかっていた。
市長さんとか、商店街とか、校長先生とか、教育委員会とか、
大学とか、様々な圧力がそこにかかっていた。
担任の教師は中間管理職の鑑のように灰皿を持っていた。
それにさっきから、廊下側の窓が開いて、
謎のカメラが回っていることにも、
中学生たちは気付いていた。
ただ、言うことはともかくやってることが滅茶苦茶なので、
みんな笑った。
「教育実習は七時半には出勤し、十七時頃まで続きますダロ。
マジかったりーダロ(?)
一時間いやカップヌードルにしてほしいダロ(?)
中学校教員免許希望者は三週間以上、
高等学校教員免許希望者は二週間以上の実習が必要ダロ、
実施時期は、大学四年生の五月~六月が一般的で、
九月~十一月に行われることもあるダロ。
もうかもちゃんそれを想像しているだけで、
鬱になってしまうダロ(?)
心は、どこが動きで、
どこが意味や関係なのか、区別しづらいから、
世界がぐるぐる回る、だからビールの味が忘れられない、
気が付くとアルコール中毒、麻薬中毒者の仲間入り、
夜は夜でヘイトの集まりに繰り出すダロ(?)」
―――いうまでもない、嘘だった。
かもちゃんは、二本目のビールを取り出し、ゴッゴッと飲んだ(?)
プロニートの腕の見せどころのような飲み方だった。
遊び感覚や、ゲーム感覚を併せ持ったような飲み方。
二日酔いの教師はいるかもしれないが、
その場で酒を飲み始める教師はさすがにいない。
―――表現の在りかたにフォーカスする切り口。
「それに教育実習生は準備をしなければいけませんダロ、
使用している教科書や問題集を購入したり、
筆記用具、メモ、採点用の赤ペン、鋏や糊や定規、
宿題や提出物確認のスタンプ、授業見学で書きこむ時のバインダー、
種類整理のクリアファイル、体育館シューズやスニーカー、
腕時計―――などがいりますダロ、
しかし一番必要なのは、やっぱり点滴ダロ(?)
そして、ビタミン不足を補う、
マルチビタミン、野菜ジュース(?)
酔っ払った頭に染みるぜ、味噌汁ダロ(?)」
とか言いながら、かもちゃんはそれらを何一つとして、
持っていなかった、
裸の王様のように持っていなかった(?)
伸ばされた指もあれば曲げられた指もある、
欠落は事後を発覚させる。
しだいしだいに、かもちゃんがどういう意図で、
そういう話をしているのかが何となくわかってくる。
わからないことを、
わからないといえる空気づくり。
「教育実習では自己紹介をして体力が削られるという伝説が、
ありますダロ(?)
内向的で、引っ込み思案、コミュ障真っ盛りの、
かもちゃんに務まる仕事ではないダロ(?)
でも、憧れの先生になるための第一歩ダロ、
クラブ活動で思い出づくり、
担当教室でみんなと写真撮影をしたいダロ(?)
手紙やプレゼントが欲しいダロ(?)
そして教育実習の体験談で、リア充みたいでいたいダロ(?)」
かつ―――ん、と一度くちばしを閉じた。
シリアスな顔になった。
「けれども、やっぱりそんなこと出来なくてもいいと思いますダロ、
無理なものは無理だし、出来ないものは出来ないダロ、
先生だからえらいということも生徒だからえらいということもなく、
誰でもやれることがあり、やれないことがある、
あとは、自分に合った生き方、そこにおける心掛けや思いやりで、
やっぱり人を教えたり学んだりしていくしかないダロ」
―――担任教師が口を開く。
かもちゃんは、教育実習生向けのビデオ撮影をしていらしい。
途中からそうじゃないかとはみんな思っていたけれど、
かなり不良な教育実習生を体当たりで演じられていたし、
ブラックな要素も含まれていた(?)
前々から、教育実習生の緊張を解いてあげたいと大学側が考え、
市長さんがその話を聞いて、中学校の校長先生に話が行って、
今回のようなことが実現したらしい。
担任教師がいうには、教育実習で鬱になったり、
小耳にはさんだ話では、教育実習生の不登校があったらしい。
小学校なんかでは教育実習生が消える話はよく聞く、
その話を担任から聞かされて微妙な空気になることもある、と。
、、、、、、、 、、、、、、、、
子供は残酷だし、大人は勉強しない。
かもちゃんも話す、
会社なんかでは一日で仕事を辞めるプロもいますダロ、と。
かもちゃんが、中学生たちに言った。
もうカメラは回っていないので、普通だった。
「かもちゃんは、後でハンバーガー屋に行って、
お腹いっぱい食べてくるダロ(?)」
餌に釣られた鳥(?)
それ、籠の中の鳥(?)
「けれども、担当の先生がいびり倒す話は正直不愉快だったダロ、
かもちゃんが知る限り、人をいびるのが好きな人がいるだけダロ」
、、、、、、、、、
これは人を怒りたい、という病気。
「かもちゃんの言う通りです」と担任の先生が肯いた。
「向き不向きは、最初会った段階ですぐわかるダロ、
喋るのが苦手、人づきあいが苦手、学生気分が抜けていない、
真面目なように見えない、そりゃ色々あるダロ、
最初からできる奴なんていないダロ、
だから、それをどこまで克服できるか、
駄目でも頑張ってやれるか―――もうまったく全然駄目で、
そっと、他の道に行った方がいいんじゃないかというレベルか、
など、ちゃんとあるはずダロ。
学校は会社ではないはずダロ、
だからまず、一生の仕事としてどうか考えながらやってみたらダロ、
そりゃ怒って伝えたいこともありますダロ、
でも、それが本当に必要か考える努力を忘れてはいけませんダロ。
たとえ教育実習生が受け入れの学校先に、
何らの義務や責任がないにしても、
こんな馬鹿なことがまかり通っているなら、
学校のシステムを理解していないとしか思えないダロ!
教育に力を注ぐことは、この国を作ることと同じダロ!」
かもちゃんがすごく怒っているのは、すぐにわかった。
窓の外を見ると、様々な鳥が勢ぞろいしていた。
かもちゃんが、くちばしを閉じた。
「まあ、担任の先生はそういう人じゃないので、
言ってもしょうがないけど、
どうもキャリアをRPGシステムと、
勘違いしている人もいるようダロ、
今日の夕方は一緒にお酒飲もうダロ、
教育の話でもしようダロ」
「かもちゃん、焼鳥買ってくね・・・(?)」
かもちゃんは、人気者である(?)
かもちゃんが、言った。
「顧問教官の適正も本来は視野に入れなければいけませんダロ、
学校教育に携わる人間でもわかっている人いるはずダロ。
自動車教習所でもそんなポンコツがいますダロ(?)
外してくださいダロ、いずれクビになりますダロ、
ツイッターのブロックよりやさしいダロ(?)
会社ではそういう手合いはクビになりますダロ、
ありとあらゆることの正常化、適正化が行われ、
教師不適合者なんかに生徒を教えてる学校もどうかと、
みんな思うようになりますダロ、
でもそれはつまり、生徒も、親御さんも、
この世界のありとあらゆることにもたらされる改革ダロ」
社会が変わり始めていることを告げる鳥、
―――それはきっとあなたにとっても利益があるだろう、
誰にとっても利益がある、とはいかないが・・・。
学ぶことは砂のようにある、
考えることは星の数ほどある、
―――でもそれで人間が変わるということは、
ただの一度もない。
―――変わるのは一人の人間だけだ。
その一人の人間たる自分を教育するしかない。
「優しいだけじゃそれは駄目だとは思いますけれど、
だからといって、かもめハウスに教育実習生が、
愚痴をこぼしにくるのはどうかと思うダロ、
その時は、とりあえず社会人の試練ダロ、
大変だけど三週間ぐらいはやり遂げるダロ、
明日から学校に遊びに行ってやるからなと励ましたダロ」
どうも、かもちゃんのところに、教育実習生が来たらしい。
中学生たちは、肯いた。
みんな、困ったらかもちゃんのところに行こうと本当に思った。
、、、、、、、、、、、
人に教えるとは何なのか?
人によって教えられることの方が多い、
学ぶ姿勢のない人間を教師というのだろうか。
だったら、学校なんか潰してしまえ、
塾の講師のシステムを採用しろ。
「どこでも人間の屑というのがいますダロ、
この中にも人間の屑になったり、
あるいは人間の屑というのに巡り合ったりすることがあるダロ、
真面目な話、頭のおかしな人にも会いますダロ、
そんな人がいるというぐらい世界は広いということですダロ、
いきなり差別発言も十分にありますダロ、
動物パターンでは、最初優しく途中からボロが出る、
パターンもありますダロ、気を付けて欲しいダロ。
いい人は最初から最後まで、ずっといい人ダロ。
嫌な人間や駄目な人間にきちんと社会的制裁を与える、
きちんとした罰を与える、
常に若い人は明るく楽しい社会を、
いままで困難だった、絶対に無理だと思っていたことを、
実現しなければなりませんダロ、先輩後輩、年功序列、
色んな考え方がありますダロ、でもそんなのは関係ありませんダロ、
いいことをすればギブアンドテイクが起こり、
道徳観や価値観の転換も起こりますダロ、
衛平原理、平等原理、必要原理、独占原理、様々なものがあるダロ、
いずれ、みんなそれが何か知るようになるダロ、
でも最後は人間関係を重視するものダロ、
心理学や、学問が教えてくれるのは表面上ダロ、最後は人間ダロ、
ありとあらゆる悩みは人間ダロ、
そこにおける人間は前を向けるようにしなくてはいけませんダロ、
優しさは何か、学ぶとは何か、生きる上で必要なこととは何か、
その時どうあるべきか、当たり前のことを当たり前にできる社会は、
教育にかかっているといっても過言ではないダロ!」
そして、かもちゃんが、アバヨとか言って帰って行った、
十二月の朝―――そろそろ冬の真っ盛りへ、
シベリア超特急・・。