koichang’s blog

詩のノーベル賞を目指す、本を出さない、自由な詩人。

不可解な夢想・人間・ふくらみ・黒い羽根を持つ男・慰め

 

不可解な夢想

 

 

空白の頁がある

夜明け前の闇がある

[思考よ]128億8千万光年
                
ひとりぼっちの時計に32,768回、
びっこ
 跛の影がゆく

視力をあつめながら或る欠陥として

 味わっている


       たてがみ
掛け布のような鬣がある
アルコール
酒精のうえに閉じる手がある

性的な禁止、死に関する禁止――

赤銹びたストーヴがある

赤く塗られた唇が繋留された気球

 のようにぎりぎりと音をたてた

ねじれた像に雪が吹雪いた

或る一瞬


       シェルフ
と だしぬけに棚が倒れた 椅子

 に当たった

考える人になる

「窓を激しく叩いているのは、
ストーンヘンジ
巨石のように動かないもの・・」



椅子はてひどく傷つけられていたが
               こざ
笑わせるな、4本に誰が跨座するものか

その内の1本はすすり泣いた肩だ

その内の1本は肘、こわばった髪を

 せわしなく掻き揚げた

その内の1本は馬のいない荒野のよ

 うに火花を大空に散らせる

そのうちの1本はごくありふれた新

 聞のように赤、オレンジ、黄色、

 緑、スカイ・ブルー、マリン・ブ

 ルー、紫に守られている基準則を



基準則は夜に属する壁画だ

その壁画のために、通知書がある[通

 告書がある]――情報がある・・。

酵母の発酵。ー密閉された絵具のな

 かに
     ひし
世界各国が犇めく。締めて、ぜんま

 いじかけ193両、

檻なのか、網の目なのか連結する。


     エクスプレス
そしてその車両の前に、
                   イメージ
いまなお我々を魅了するさまざまな像

 が出現する。

たとえば二つの相、第二位から第一位

 となった。くちづけ。腕を抱く。首

 をつかむ。語る。喋る。玉なす汗・・。
            こうだいむへん
ほの暗くうつろい去る廣大無邊の国

状況に応じてネジやボルトがはめら

 れ、その車両を走らせ、止まらせ

 時に、切断し、再度つなぎなおし

 ―――挙げ句、無神経な暴徒が

 投獄されている。嘲笑されている。

信号がある。旗がある。・・・そして

 工具類がある。計器類がある。獲
     かげろう
 得された蜉蝣の命


        コーカソイド モンゴロイド
その命のなかに白人 黄色人種
ネグロイド
 黒人――それは最初の絵の署名だ

 うぬぼれだけではよい国は出来ま

 せん。真の芸術は井戸の奥に描か

 れるでしょう・・。
   アスファルト
ここに土瀝青がある。鍵がある。

運転状況がある。通行登録証がある。

配線図表がある。踏切がある。

歴史的な差別を根にした劇化がある。

愛の讃歌・・・石のように冷たくなった

 あなた25頁の甘美な香料で、消し

 がたい記跡をつくった――
             いなずま
そしてその名前は遠い雷光のように、

 肩で風を切って消えてゆくのです。



国家という玄妙な防腐の香油、

戦利品と権利。[無際限の苦悩]は、

 ひと足ごとに種を葬ってゆく。

経験が死に、峻険のあまり狼狽し・・、

 詩人とは――? 詩とは・・? 言葉
            ランプ
 など殉教の地響き。洋燈のなかの焔

 組織とは! 宗教とは! ビジネス

 とは! ・・・俺は苦しかった



天皇ー内閣。それは既知の限界を超えた

 ところにあり、祖国の愛とは・・・何?

 懐包しうる廃止・・命令と、無限の成長

 ――陶酔する語群。悲劇めいた至高の

 ヴィジョン・・えん管に火を点じ、

 火山のように噴火する

俺は普遍的戲れ。でなければ眩暈めいた

 うごめき・・神よ! 神よ――あなたは

 俺に鉛筆を与えた。紙を与えた。万年

 筆を・・・ワープロを、パソコンを――。

「手続き」は整った・・心得は知ってる、

 創造すること! ――踏み外すこと!



でも扉はいまも固く閉ざされている
       かんぬき
人の心の内側に閂があるのだ

そこに『死の宣告』がある・・消しゴムが

 ある。過去系で語る詩に憑かれた男が

 いる。・・・軋み音をたてた階段がある。

 駆け昇ってきた! つぎつぎ、あんた

 の前でブチ壊してみせた
      しか
でも、顔を顰めると異形の外貌をおび、

 アクセサリのように脂臭かった。酒臭

 かった。俺は・・・俺を駄目にする屈辱が

 あった。接近の困難な超人的な努力が、

 ・・・難解晦渋さ、幻想が、神話が――



そして感覚の網目の中には 

改められた男がいる。

リンパ液や、ヘモグロビン・・

いま葡萄酒のグラスがある。

それらと一緒に寝ることだ!

取り返しのつかない過去は映画の話では

 ない。・・・ここにある、印刷できる、

 そして心臓が活動する――。

そこに黒い背をした男がいる。

眼球をくぼませ、額を禿げあがらせた男が。

 冷たくむごい蓄音器のような声で、アクセ

 ントもままならず、狂った眼をして、敵と

 いう矛先もみつけられぬ微苦笑をして・・。



空白の頁がある

夜明け前の闇がある

[思考よ]128億8千万光年
                
ひとりぼっちの時計に32,768回、
びっこ
 跛の影がゆく

視力をあつめながら或る欠陥として

 味わっている



水に移る萬象の形が揺れ動く

氷河時代のマンモスの牙でも落ちたような

 波紋。さざ波――しかしすぐ火を噴く

何年もの間・・恐ろしい夢を見ていたのかも

 知れない。『天国を夢見る魂』は、人に

 地獄という笑いの大滝を誘うもの・・・

それは両義性をもち、性的に分化していな

 いアダムとイヴにまで遡った。

彼は彼方だった。渇きだった――そして闇

 のうす暗さ。どんどん消え去ってゆく。

 光の中へ・・・、さあ光の中へ―――



第一の駅で後部標識を見た

第二の駅で整備の欠陥を知った

第三の駅で破損と、妨害と――

正常よしと、まがいものばかりが、

詩ともいえぬ詩ばかりがもてはやされ、

俺はその時、運搬されていたのか、移動して

 いたのかわからなくなった・・。(精神=思

 考)――だが、プロレタリアート、シュー

 ルレアリスム。・・俺の取るべき武器は?

 ナルシズム、ダンディズム――uum・・

ブレーキはかけられないだろう。

うす汚れた煤を噴出させるしかないだろう

やはり事故は繰り返されるだろう
      ファンタスム
そして呟く「幻像」

いつの日にか、あたらしい駅に停まるの

 を終え、彼岸じみた、狂気じみた心的

 外傷――さらにその目撃にまで辿る・・
ファンタスム
 幻像――



そして俺は未来永劫にまで落書きをしよう
              スウィッチ
 と思うのだー手動でー転轍機をいれて・・

車輪はほとんど思考し得ぬもの、未知のも

 のへと向かってひた走る――どこかで塔

 がくずれ、森が焼け、地面が揺れるかも
             ファンタスム
 知れない。でもそれも幻像・・このはちき

 れそうなボタン。噎せ帰る悪臭,.oreha,.

 俺は! 打ち寄せる波。-崩れ去る波・・
ファンタスム
 幻像――孤独な散歩者は夢想する,.oreha,.
                   
 俺は、知っている鏡細工、入れ子細工の
 ワンダー
 彷徨、血の雨、泥の雨、―――メビウスの帯

 をなし。俺は帰ってゆく。・・


  最初の場面へ

 

  *

 

 

人間

 

 


あなたのがらくたの袋を、譫言と思うことで。

あなたがそれに触れるだけで

同じ痛みを味わわせぬと祈ること で。

それはそうと見分けられず、

ただそれであると選ぶこと で。

見落としそうな一つのことを埋葬する、と呟くこ と で。

来たるべき方向へと転ずることもできず、

君たちは哀れです、ただ――(無機質なものを望み、

空気中でねじりながら、おぼつかないそぶりだと!・・)

いま、行く手を照らすよう(「に」)遮り、傷付くこと で。

耳を閉ざすようで、澄まし、泣き声をあげぬこと で。
         あばらや
(ここは、)まるで荒屋、[廃墟]――のように遠く離れ、

もろもろのおぼろげな“集合体”と! ・・・たやすく選ぶこと で、

あらわれてくる麻酔で鈍い“わたしという意識”

どこにどのようにいたかと感じること で。

それで得られなくても、たとえ得られなくても、

内部に吹いている風が

[成長することで、]髪の、舌の、葉の、雲の・・

「いつかは終わるの? 誰かを幸せにするためにあるの、(I`mです

愛撫です、)」――成長した、嵐を見ること で[あなたは正しかった、

と間違いをも呑みこむことで]・・・瓦礫の奥にいま、ロウソク(という、)

咲いたひとつの花を許すこと で。

崩れ落ちた我が身より救いを願うこと(「で」)

わたしが得られなくても、たとえあなたが得られなくても、

自分よりも誰か他の者を生かすため、と重ねること で

[いくつもの正気を]

――ひびかせるということで(「で」)

 

  *

 

 

ふくらみ

 

 

   
  気になるのに、生きていない
    ゆりかご
    揺籃から     (嘘でもいいから


                     ――見せて


       桃も、葡萄も、梨も、石榴も

   蟻      (を這わせて


     ・・・つるくさ Please come to my page

         “啓示” どこかで気付いたの、湧き出して聞こえ始めた

             傷ついてる      僕は


   口元をゆるめた      (ただ、それだけで、

       ほおが赤く染まる、きっと――目が


             ・・・・・・気になるよ      ( 髪型を変えた、理由


         ねえ、傷付く意味はあるの ・・・してみ て
           
           背後から      「あの・・・


     わたし。ずっと


         点滴がおちるリズムで   (名前、)

       文字は、魚や鳥や、火や水――


            手鏡のように

                     ・・・うつし、とりたかった


                     (羽交い締めのような

              へびのなまごろし。・・・手れん手くだ


  (で)気がつくと、・・・無口になる、でも
    ウォーター
    水音     (「あの山の曲がりくねった川から


                     ――耳元へ

       しぶき
       飛沫をあげな が ら

   割れる      (場面の静けさ、)


             ・・・・・・気になるよ      ( 口ごもった理由

         くちびるの、かげになるぶぶんが


                     ――(が)こんな に


 

  *

 

 


あくどい
さいなみ
呵責から

逃れるため

人は断崖の窪みに立つか
いや
否 人は旅に出かける

それは姿を見せずに鳴き声をひゞかせる

海鳥のなまめかしい存在だ

夜――

旅館の私の部屋に隣の客が

怒髪、天を衝く
いびき うるさ
鼾が五月蠅いと・・

  上も下もない夜 誰もあずかり知らぬ夜

  さて空ばかりが私の領土に掲げられた旗を知っていた

  それも三日天下に呆気なく落城し

  鼠やゴキブリのように部屋の隅で

――目の中を覗きこむと

私は闇の中で

いつも来る筈のない来客を待ち受け

  たった一杯のコップでもいい

  ・・・夥しい竹林よ

  その根に絡む録音機の卵よ

私は目をつむりながら

嘴や 目玉や 何枚もの羽根が

私に向かって墜落てくるのを感じた

  ジャングルをふるわせて咆哮する

  ホワイトタイガーのように

  舌嘗めずりもせず 引き締まったように、

  寒さと怯えに縮こまった
  ターゲット
  標的へと・・

あの時の肉体は地雷で木端微塵にされ

ますます僻み根性の痩せ我慢が

人並み外れた冷淡な性格と

歯切れの悪さをうんでいる私へ・・

  そして私の旅館のその一室で

  輪を描いて ロープを少しずつ

  狭めて ――密度をゼロにして

長い年月にくつがえされていた口の中に

目をふさぐ舌に

人間にとらえきれない海鳥を思った
     あほうどり
率直に ・・信天翁を思った

想像力の限界を思った

波と渚のように親しい

  この影は 助かりはしない

  ほの白い光を放つ

  半鳥人――

そして血が凍えるとき

どうして“黒く”なるのかを

夕方 溢れ出した蝙蝠のように

狂おしく理解し

次の瞬間 かなたへとのびた

空想の黒い線路でもあるように

つめたい悪魔は翔んでいった




  *

 

 

慰め

 



鉄の思想の電線犯行予告――

                「テロリストならそうだ。」

アメリカなら かんじんなのは 撃墜マークと 勲章

言葉はいらない! 命令されたから 職務を全うしたから

家族を人質にとられ、

            断れない、

                  あの世行きへの旅。

おうむの羽根をひらかせる、

                気味悪さ、

                      後ろめたさ。

鉄格子のなかに入れば 奴隷だ ガスの王冠だ

ニュースで中継されれば 墓石だ ろくでなしと唾を吐かれる        

そして 十字架となれば――

                  非業の死を遂げれば

しかし 愉快犯は 掲示板に書き込む

黄色い声で わなに 陥としいれる

その瞳を覗きこめば 反省がなく しかも身勝手だ

それでも 密告者のなかには、

                  宝もののように扱う人もいる。

微笑を押し殺しながら――

             「無罪の証明をするのか?」

それともそれは暗号なのか 世上の雨を やぶにらみさせる

それともそれは生贄なのか あなたが 鉄格子にはいらないための

批評家たちはぶつぶつ言う、

                 卵をかきまぜ、

                          スープをつくる。

これ見よがしの犯行声明――

               「満月は空にかかったのか?」

ふくれあがる 群衆! 蜂起せよ 群衆! 

と いう声、
 
      一本の 血管で つながった 導火線。

ぼくらの咽喉に 悲しみが 込み上げてくる!

世界中で 一番不幸ではないくせに その悲しみが

火を

  放つ

    そして、もう 止まらない 真空

睦言を 暗い部屋の中で 語り合う方が

罵詈雑言を ごみの山にして 燃やす方が

・・・この時計の歯車の中でとじこめられ

                      もはや 沈黙は

美しくない 雑草のざわめき 池の波紋より

さあはやくキスしてくれ さあはやくセクスしよう

銃殺された子供の顔も見ないで! 無言を! あなた達は知らないで!

どんなに ぼくは望んだだろう――

                  「誰ひとりとして 死なない国。」

神を憎み キリストをも憎み 正義にすら唾を吐き

つぎつぎと 踏み固めていった あの理想

ただこの地球という浴場で

               裸になるという

                       愛のよろこび

――それは 革命か? 委任状だったか?

キャベツ頭たち ・・・かれらは いつも 卑劣!

みな 緊張した眼の奥で 小さな 手榴弾を かくしていた

吊革につかまっても バスのシートに凭れていても

船酔いは 未来に対する使命 ・・・パスポート

ざわめく この町に 

           ハンマーの打擲音

                      シャツの帆が

それに 揺り籠や つむぎ車を おもった――

                        「牢獄をめぐっても?」

ぼくらは 頭をふりながら 考えていた

へたくそな縫い目で 喧嘩をせず だれとでも友達となり

友達が病気ならお見舞いへ 早くおいで と

駈ける・・・・・・

       ほらいる ぼくはもう両腕に抱いている

青い空を なつかしい風を 海を

あたらしい朝を やさしい森を

ポケットから 飴玉や カードを取り出し

それから 天国の歌で みんなを しあわせにした

・・・・・・間違っている 悪も 道なき道も

エリートも 落伍者も まじりっけのない愚かさで 愛した

ぼくは網をみている、
 
            敵意を 不機嫌を、

                       そして 悲しみを

ぼくは知らない ただ幾たびも するどく味わってきた

泡! あの砕け散る 泡! 

打ち寄せる波のたびにうまれた 泡!

さよなら あなたとまたお別れ――