koichang’s blog

詩のノーベル賞を目指す、本を出さない、自由な詩人。

イラスト詩「すべてはよくわからないところから始まった」

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煙の部屋から出てきたガスマスクの女
別にガスマスクをつけて生活をしてもいい、​
けれども、初対面の人間にとってこれはやはり最悪だ。
恐怖というのはやっぱり、異常なことから生まれてくる。
喩えが色々と雑だけど、コーヒーを醤油さしに入れたらみんなビックリする。


―――昭和三十八年八月・・・・。
―――昭和二十二年二月・・・・・・。

、、、、 、、、、、、、
ちなみに、特に意味はない。



説明すると簡単だ。
Gと呼ばれる都会でもっとも恐れられる昆虫が出たため、
・・・・・・いや、あいつは黒い悪魔だ。

バルサンを焚いて、しかし忘れ物をしたので、
ミリタリーショップで売られていそうな種類の、
どぎついガスマスクをセッティングし、入った。



​​​ふごーっつ・・・・・・。​​​
​​​ふごーっつ・・・・・・。​​​


―――突入、撤退!

運悪くその家から出てきた場面に遭遇したのが、
飛んで火に入る夏の虫なんだよといわんばかりの僕だった。

恐怖に似た悲しさが心臓のまわりに薄い氷の膜を張り、
僕はさながら息をするたびに肺が凍る氷の世界。
もあーっ、とか、毒ガスサリン
なのか、

はたまたもっと違う毒ガス兵器を、
​​​​​​連想させるシチュエーション、超展開で。

SOS中、僕は言った。

あのすみません、ちょっと腕見て欲しいんですけど
​―――​​何言ってるのかわからない度数満載だったけど、​​
​​背はかえられない。​​

ちょっと見せてください

、、、、​​​​​

見るんだ。


いや、僕も実をいうとあんまりまともじゃない。
腕がもののけ姫のアシタカの呪いのように、
​​​樹化していた。それは意識の野放図な拡張に由来する、
といわれてもそうだと思うぐらいの現象である。
ユリ・ゲラーがスプーンを曲げる。


アブナイ! OLが樹化する病が蔓延中・・・・・・・”
こんなセンセーショナルな見出しを想像した。
ちなみにそこの雑誌記者は高須クリニックに取材に行く。
不治の病、樹化する、深く静かに広がる樹海・・・・・・
僕だったらこのように詩的にする、仕上がりに違いはない。​​​



ることのできないものを、​
百万分確率とか、一千万分ということで、​
かに蔓延しているような印象えられる。​


僕は国際化と疫病を指摘
し、
数値から導き出されるビックデータの実態
が、

大衆の無知からきているものだということを僕は知っている。

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お互い色々とおかしいという共通点がそうさせたのか、
彼女はひとしきり腕に触って、これは杉かな、松かな、
それは高みに立つエキゾティックな心地よさなのか、
ウーンどうでもいいなと言
った。

、、、、、、、、
じゃあ何で言った。


とりあえず、喫茶店でも行って話でも聞きましょう

フィリピンや、タイに行きましょうと言われても、
僕は肯いていたところだ。

ありがとうございます
でもマスターにマッシュルームといってはいけませんよ、
喜びますから


茶店は、このガスマスク女の家の数件隣にあった。
類は友を呼ぶ地域なのか、
やたらと、これでもかとキノコが占拠している、
謎喫茶店だった。

きのこ博物館といわれたら、僕も信じたかも知れない。
百数十種類のきのこが、そこに湿っぽい黴のような、
不思議な空気を作っていた。縦軸としてというより横軸としての、
厚い堅固なバリケードを作っていた。
そしてそこは蜥蜴の尻尾のように再生する、都市伝説みたいなものだ。

ナウい若者に大人気! きのこアイス 700円
■ナウすぎてナウシカ! きのこジュース 500円


ぼったくり?

、、、、、
といっても。


すべてお手製のクッションということだったが、

本物が混ざっていても誰も気づかないに違いない。
生活意識は吸い取り紙のようなものだと思う、

陰気な入口の前でも僕はこう思った。
木の葉を隠したければ森へ、人を隠したければ都会へ、
そしてきのこを隠したければこの喫茶店へ・・・・・・。
あというまでもないが、店内に若者はいない。
もっとカブった、モノノケった連中である。
筋肉質の男がメイド服を着るというインパクトみたいに、

もっとカルチャー・ショックを持った連中である。

スーパーマリオか、
『トリュフ探索のスペシャリストの豚』でもなければ、
きっとここに来るのは、
『日本きのこ狩りツアーの面々』に違
いなかった。
誰がどう考えても、『きのこ教』である、
そして男の股間にあるそれ
をも、
一子相伝とか言い始めたうえ、超解釈で、
フレグランススポットの、きのこ、
と呼んでしまうに違
いなかった。

霊が憑りついて夢遊病状態になると窓へ行きたくなる、
飛び降り自殺したくなる、そういうことは、あるのだ。
因果とか、波動というのは存在する、
きのこ宇宙できのこを認めないことはその病に浸ることになる。

だからそいつらはみんな語尾にきのこをつける。
もちろん僕はスマートな社会人である。

コーヒーをくださいきのこと真顔で言った。

ガスマスク女は、ガスマスクを外した。
そこにあったのは美女と呼ぶのにふさわしいルックスだったし、
モデル体型だったが、
それがまた色々と残念だった。

それでどうしてこんな腕になってしまったんですか?

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一応だが、ガスマスクの女は、

西洋魔術研究所という怪しい看板をし、
さらに塾を経営していた。
誰がどう考えてもそんな研究所で生計立てられないとわかるので、
塾で生計を立てているのは一発でわかったが、

こんな塾へ行かせる大人の気持ちがわからなかった。

なんというのか、塾で成績アップというより、

​​​​成績上位者を呪い殺して平均点を下げているような気がする。
ちなみにそこのポスターの文句は素晴らしかった。
時代劇の格好をした、
商店街にいそうな金物屋の腹でたおっさんが刀抜いて大上段の構え。

もののふ時代勝利者となれ! 

もののふ時代というのがいい


けれども一流大学出身ばかりの出版社が、
中卒とか高卒の漫画家に振り回される場面を想像してみるといい、
手塚治虫的チョコレートの神話である。
世の中は我が儘で、不条理なものである。
そこで蠅にとまられたり、アルパカに「アルパカだけど何か?」
と言われる場面を想像してみるといい、
―――もののふ、いいじゃないか、と思う。
​​​

、、、 、、、、
そして、帰りたい。


僕だってこんなところへ来たくない。​
でも、病院へ行ってもよくわかりませんと言われた以上、
そのまま行ったら実験という名の玩具にされて、
​いや、疑心暗鬼や邪推の法則とはわかっていても、
猿がシンバルを叩く真似​
をさせられたくない、
だるま女のように四肢切断されることはないだろうけど、
最後に待ち受けているのはサーカスか人体実験場、
西洋魔術研究所みたいなところへ行
くしかなかったのだ。​



感覚​た、​
群衆密度徐々離散していく感覚​た。​


​「実は家の庭にある大木を―――
​​​​​​​「切った?

それはオルレアンの噂のような、無法地帯
あるいは幽霊物件不動産契約をするようなもの。

・・・・・・というような緊迫した描写だろう。

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いえ、うちの家で飼っている熊が、
掘り起こしてしまって・・・・・・
が?​
​はい、です​

僕は熊を飼っていた。​
​​​​​​​​ちょっとより背丈きく、近隣住民ビビらせることさえあれど、​​​​​​
​​​​​とてもモフモフで、ちょっと大喰らいな、可愛である。​​​​​



熊の飼い主であるあなたに、樹の呪いが降りかかった


脳が溶解する狂牛病、パンツをはいたロウソク病、
どろどろに溶けてゆきそうな世界の中で―――。

、、
断言・・・・・・。



間違いないですね、それは樹の呪いですね。
少女が人魚ファッションのズボンをはくように、よくある呪いです。

ちなみにそこのマスターが頭にきのこをつけているのは、
趣味という呪いです
最初からわかってましたきのこ
キノコイズムにとって、それは愛のある言葉ですきのこ


―――だからどうしたと思われるだろう、
彼女はどうしたらいいとかという対処法の部分を話さない。
僕におごらさせる気満々なようで、たくさんの料理を注文した。

わからないのかも知れなかった。
美女というのでこれまで得をしてきた、それだけはわかった。



僕は涎れそうな頭のねじを二つ三つ外しながら、
きのこがたくさん入ったスパゲティーを食べた。
きのこアイスやきのこジュースは本当にどうかと思ったけど、
きのこスパゲティーのクオリティは素晴らしかった。
中華料理屋で蟹を生で食べるようなものだ。
三日後、腕は普通に戻
った。

一週間後、きのこ協会からの熱烈なラブレターのような招待状が来て、
十日後にガスマスクの彼女から法外な請求が来た。
一億だった。
怒鳴りこみに行って僕は西洋魔術の神髄に触れた。
次の日には会社に辞表を出して、
三食昼寝付きで助手として働き始
めた。


​、、、、、、、、、​​​
そして熊を紹介した。
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