夜だから危ないということで、
家まで送る。
夏の夜。
、、、、、、、、、
駅前の大きな交差点。
幼く怯えた花嫁のような彼女が、
肯く・・・・・・。
あらわな肩に波打つ髪。
ラルゴ、プレスト
遅く、速く・・・。
からかうと顔を両手で覆いつつ、
指の隙間から困ったような瞳と、
赤らめた頬が見える。
―――今日という日が永遠に続きますようにと、
願わずにはいられな―――い・・・。
、、、、、、、、
瞬間と永遠の体温。
この街に潜んでいる、無力さ、
その陰気さの底には怨みや悲しみがある、
人々がする冷笑は博物館の硝子棚にあるみたいで、
それを見た僕に人間は、
孤独で淋しいものだと自覚させる。
信号機のあのパターンが、
蟻の法則のようで時々嫌になる・・・・・・。
クローズアップで表面をなぞる繊細なディティール、
けれどもその奥底で違和感を覚えて。
灯入り模型都市のような遠景が、
蛍みたいで綺麗だと思う。
色んな思い出が浮かび、
そのうす暗い影で万物を覆っている、
都市の孤独。
眼を閉じれば、ぞっとする。
そうしていると、随分時間が進んだような、
そんな気持ちもしてくる。
嬉しいような怖いような、
そんな悠ったりとした時間が流れる―――。
フラッシュバック
切り返し。
大人でいたいような、
まだ子供でいたいような―――気持ち・・・。
そしてこれからも永遠に満たされることのないであろう、
少年期の憧憬・・・・・・。
消せない過去は、
いつまでも自分を形成する重要な証拠のように、
欲求不満の癇癪玉なんだ。
、、、、、、、、、、、
枕の上に頭を置いてきた。
誰かを家まで送るっていうと、
下心なのか優しさなのか、
それとも、という部分がある。
ヴ ー ザ レ ヴ ォ ア ル
意味はその下にある・・・・・・。
誰かの気持ちを見抜くのは難しい、
ただ一つだけ言えるのは、
嫌いな人間を送っていくことはない、
ということ・・・・・。
誰だって軽蔑されたくない。
波の音が単調に反覆を繰り返すような足音の中、
安心させたくて、
別に下心はないと言う、
彼女が顔を見せてくれない、
逆効果なのかな、
薄ら氷に似た羞恥がほんのりと浮かぶ、
家の傍まで来たら帰るよと言う、
ピクンと反応するアンテナの感度、
心配だから、
まだもう少し一緒にいたいから・・。
意識の領域の何処かに到着する。
聴覚や嗅覚や触覚を含めた、
全身感覚的なその場の空気。
でもそんなことを言うと、
壁を作ったようで気まずい、
きわめて単純な仕組みと法則のもと、
自然無口になる。
本当に相手がどう想っているかなんて、
誰にもわからない。
心の中に拡げられた地図、
関係の地図、距離の地図、
主要建物の地図、必要の地図・・・・・・。
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プレイグラウンドという名の社会的な場。
どうすれば、笑っていられるだろう。
どうすれば、自然にしていられるだろう。
中学生みたいな恋愛、
恋愛の仕方なんか知らない・・。
爽やかな緑の一滴、
髪は八月の夜のそよ風にそよぐ。
盈ちる月・・・・・・。
アポロ的な統合と完成と、
デュオニソス的な混沌と生成。
人工衛星みたいに進んでゆく車のヘッドライト。
未来予想図に描かれたような世界とは違うけれど、
殺風景の中にも成長途中のものがある。
自動販売機、街路樹、共同椅子、
バス停、住宅街―――。
ム タ テ ィ ス ・ ム タ ン デ ィ ス
変更すべきものは変更して・・・・・・。
インスタグラム的な見え方の極致。
話し合いや歩み寄り、
それから同じ方向を見る途方もない労力、
それを楽にするには、
もっと心地よくするには、
いつだって勇気という名の魔法が必要だ。
妙に挑戦的な効果を生み出す、
静寂の威圧感。
アナログとディジタルの帳尻合わせ。
中身のない会話が永遠に繰り返される、
―――ような気がした、
中身のない気軽な会話を楽しむでもなく、
傷つきたくないがためにそれを続ける、
最初見た時と同じ方向を見続けている・・・・・・。
地雷原、
有頂天の溺愛、
そしていつかの永遠の空虚。
ちょっと寄り道してもいいかな、と言う。
もし嫌じゃなかったら、
少し時間もらっても、いいかな・・・・・・。
手が―――震えた。
胸が―――熱くなった。
だって彼女が笑顔で、
いいよと言ってくれたから・・・。
夢の中のように道は続く。
いつもなら、
川の音も、
虫の音もこんな風には聞こえない―――のに、
とても心地よいものに思える。
それは生活力や、影響力の幻を溶かしている、
揮発性・・・・・・。
遠回りして君の家まで―――送り届ける、
工場の看板も、
ウォーキング・ロードも、
別にいつもと変わらないのに、
誰かが窓を開けたみたいに、
別の景色に見える・・・・・・。
、、、、、
息が匂った。