夕方、雨宿り。
三年間の月日の間に境目があって、
日向の席は遠い、
コンクリートの床の固さ。
黒いスカートと水溜まりのある冷たい路上が、
電光を白く煌めかせる。
いろガラス シルエット
玻璃硝子に影絵が映る―――。
率直な良心派になりたい僕と、
殉教面をしてギリシア悲劇を始めたい君と。
大切なこと、肝心なことをすべて省略して、
書いても書いても下らないことばかり重ねた。
カラオケで英語の歌を歌ったみたいな、
パーリーピーポー。
ほとんど必死で、楽しい雰囲気を創ることに努力する。
気が付いたら軽薄な常套手段。
うっかりすると、リアル死亡フラグ、
無理ゲーへUターンラッシュ。
香水の薫りで期待をアジテートされても、
さざなみの綾のような波紋が生まれて逃げてゆく。
吃驚させるような向日葵があった―――よ。
カンナが咲いていた―――よ。
挑みかかれない微風だった、
蟻の挨拶のように触角を触れ合わしたりした、
ただそれだけで夢のようでもあり煮え切らない僕等、
いつまで経っても同じ繰返しばか―――り。
こぼしたものを拭くやら、拾うやら、
鼻をかんでいるやらの、
子供っぽい話者の屈折した感情。
キラキラ持ち込むなイカレポジティブモンスター共の策略。
それで―――も。
真っ暗でなにもわからない手探りで扉を開ける。
〇・一秒を彷徨う、
彼女の制服が透けて恥ずかしそうにしているのは、
陽気な、それとも深刻な類のからかい?
濡れた毛先がうなじにかかっている。
おっとりとした眼元と泣き黒子。
眼を背けて、鞄から取り出したフェイスタオルを渡す。
使って―――よ。
使えない―――よ。
レディファースト制。
おずおず受け取ったら、
ちょっと気にかかる程度だと言う。
怯えに似た戸惑い、打算や駆け引きとは違う。
でもそうしたら肩から腰へかけての大波を揺らせながら、
笑う―――笑う・・・・・・。
眼の上に黄色い電灯の光が俗化せる風流生活。
謎の充実感と娯楽感をもたらす芝居小屋。
何か切り返されたら、きっと、ぐうの音も出ない。
想像力なんて意味がない。
実際的なことが最上の方法だと知っている。
液晶画面に貼られた硝子がバキバキに割れてしまったような、
永遠の何かをつくりだそうとしている混沌のただなか。
誇張法とユーモアをまじえたような能天気な無防備なら、
もう何回脱がせたかわからないような、
肩や、薄い背中なのに。
それを罪という感じ、恥という感じによって、
不自然な動揺や辟易を神経に引き起こ―――す。
ミシン機械のように動く手が、
背景的情報。
ノーモアヒロシマ言ったって、
クールビス言ったって、
郵政民営化が消えない。
ハウツー本を買ってカモネギへ立候補。
人の顔もはっきりしない程に暗く、寒く、湿っぽい、
待合室のような整頓を意味する、発展を意味する、
―――賭博。
引き離されていて互いに求めあう心が、
一挙手一投足に痛痒を感じさせる。
明暗は表裏、
諸々の相反する総合が人間の実体。
不審なことが、逆説的な本当で。
その不可思議こそが、熱の在り処。
人生ゲームで棒人形に連れ合い見つけて、
職業カードと株券片手に、
ドライヴしてきたような奴なんて何処にいるの?
狂人の如く興奮し、死人の如く絶望し、
手足も動かせぬ不測の運命に臨んでいる危険。
首の付け根から肩にかけての強張った筋肉の強張り。
脇腹に食い込む世界の肘鉄砲。
自己肯定感の高い人間ばっかりじゃな―――いんだ、
といって劣等感にまみれているわけでもない、
傍若無人になりたいわけでもな―――い。
様々なすみわけがある、小うるさい心得や禁忌がある。
ただ、バイアスかかりまくりのこの一瞬の指南書は、
現実的条件により歯止めがかからなくなるのでパス。
まだ鬱蒼としている、心の中・・・・・・。
けれど自分が歩んできた過去を振り返ってみたら、
本当に一つぐらい素晴らしい出会いもあったはず―――さ・・。
夏にばらまく金平糖。
同じ所にいるからいつでも会える、だのに夢で会いたい。
会いたいと思ってばかりいると、ふとしたことでよく出会う。
一歩下がれば特別な輝きはすぐに失われる、
一歩前へ進めば運命に不適任者が駆り出される。
[PLAYBUTTON]を押せない―――い・・。
押せない―――い・・。
夏の大三角形、
花火の音に打ち寄せる波の音、
それから人の気配に揺れる夜・・・・・。
十代のあるべき姿って何だろう、
学生の本業は勉強だろ―――う、
二十代になる、三十代になる、
四十代になる、五十代になる、
馬鹿馬鹿しくて死にたくなる、
鋭く刺激される詐欺セミナーのような、
憤りに似た感情が突き上げてくる。
あんまりにも腹が立ったらグロ映像観て、
焼肉食べられな―――い。
靴の底からしみ上がる、
じゅくじゅくした靴下の気配と、
初夏の椎の若葉の匂いを嗅いでいるような、
―――放電現象・・。
賢人でも愚者でもない僕等には、
言葉の届かぬ不思議な誘惑の奥で、
幸福な明るい顔と、
不幸で静かな顔を浮かべている。
十字路や、三叉路、二車線道路、一本道。
喧騒や嬌声とは無縁の、
重々しく古びた家並みが続く。
スパイス
焦熱を感じる、香辛料。
神社があるん―――だ、
雨が上がったら魔法のように虹が架かったらいい。
歯科医や小児科などの開業医、ガソリンスタンド、
スーパーマーケットの先にある路地裏では、
猫が日向ぼっこしている隠れスポットがある。
でもそんなことは、無意味さ。
頑張っているんだけど、そこは試験範囲じゃないし、
本気出すっていう言葉が既に醜悪の極み。
意識しないような奥義が伝授されていない僕は、
技術上の操作の限界の淵で高い壁を見ている。
ラブレターを出したらしいぞって聞いた、
フロイトの心理学みたいだ。
僕はLINEでニーチェ哲学をしている。
慎み深いんだよ、おどけないんだ、
でもそれだけじゃ駄目だってちゃんとわかってい―――て・・。
それだけじゃ、きっと大切なもの、大事なもの、
守りたいもの、本当に欲しいものを失ってしま―――う・・。
自分の内面、自分の妄想や感情が他人の眼に晒されて、
「声になる」瞬間・・・・・・。
闇の深さ、粘っこさ、知ってる。
それはなかなか自分の感じ捉えた死などという、
潔よく諦めのよいものとは違っていて、
不思議な力に充ちている。
絶望の空虚と、残忍な愛。
栄養を補給しているというよりは、
エナジードリンクをがぶ飲みし続けている若さ。
限りある忠義とピーク。
愉快なのは虚勢ばかり。
そんなものを溶かしつくしたら、また、原形に生み戻し、
また永遠に、繰返さずにはおかない執拗さを持ってる。
セールスマン問題みたい―――だ。
何度も何度もこんなことをやるの?
自分の声が別人の声のように聞こえる。
だから空間の数が増えた。壁の脱落した所で、
思いがけない方向から明りが射して来る。
最も静かな、最も神聖な最も世と懸隔している寂しさが、
遊離された進行に同意し、
プレイリストに曲名を連ねてゆく。
縞のある平面が、
大小不揃い四角形に思えてくる。
捉えようとしても指の間からすり抜けてしまう、
鋭角に攻め込もうと隙をうかがっていたみたいに、
雑草が生育し、
稲妻が閃き、
物情騒然として暗澹たる中に、
胸を刺すような鋭い号外の音。
奔走する都会。
時折遠い眼をする彼女、
閉じたり開いたりしている唇は何を語るの・・?
まだ余熱を燻ぶらしていて、恐ろしく険悪になるかも知れない、
一歩も歩きたくない、全部洗いざらいぶちまけてしまいたい。
ただ、漠然とした美しい予感があって、
一秒でもジッとしていられない、熱い胸がある。
痛みを伴う厄介な荷物が純情さとかえって抑えつけられた、
本能や生物としての醜さを語る。
時として、自分の中のそういったところを軽蔑し暮らしている。
誰でもきっとそうだろう、だから美しいものが欲しい。
弁当を隠したら、
いきなりタコさんウィンナーを盗まれる。
LINEで蛇写真を送り付けておく。
[PLAYBUTTON]を押せない―――い・・。
押せない―――い・・。
最弱音となるまでの短い時間を感じながら、
その濡れた太腿のある色っぽい後ろ姿を記憶して、
その身体の量感のなかに、
自分を引き込んでやまない迷路がある・・。