●赤ちゃんって可愛いですね、
育児ノイローゼを起こすなんて信じられません。
ちなみに外で仕事をする方より、
専業主婦の方が、育児ノイローゼになる確率が高いらしいです。
色々考えちゃうんですね、リフレッシュが大切。
道路を走っているシーンから始まります。
近頃は郊外型商業施設みたいなものがあります、
ある日気が付くと、買い物に便利な店が出来ていたりします。
Oさんもそうでした。
ホームセンターに寄ってスーパーマーケットみたいに考えて、
国道を走っていました。
(そういえば、酷道というのもありますね、
詳細なロードマップか、国土地理院の地形図など欲しいところですが、
世の中色んな道があります、)
●見るからに心が幸福になるような赤信号。
青に見えるって?
で、信号で停まった。
そして前の車の後部座席のさらに後ろあたりに、
赤ん坊がハイハイしている。
おそらく一歳に満たない赤ん坊がいる。
硝子越しに顔を出して見ている。
Oさん、こっちを見ていると思った。
それで、信号が変わるまでその子に手を振ったり、
変顔をしたりしました。
けれども残念ながら赤ちゃんは無反応です。
でも異常だなっていうのにはすぐ気付いて、
だってハッチバック式で、上部で何かしているところを見ると、
足下があるのでしょうけど、あんなところにいたら、
怪我するかも知れません。
そりゃね・・・・・・そりゃそうですよ・・・・・・。
罰ゲームじゃないんだから、あれじゃあ育児虐待だ。
―――道徳規則や道徳的判断。
いやだ、つらい、むかつく・・・・・・。
でもまあ、人様のことですし、車の中ですから口にはできません。
優しさは同一性を揺らがせる、
人はロボット、人に感情を求めるな、
―――という体験を幾度も繰り返しているはずなのに、
、、、、、、、、、、、、、、、、、
パトナムの脳のように空っぽな気持ち・・・・・・。
*
*
、、、、、、、、、、、
でもそりゃ異常でしたよ、とOさんが言う。
次の瞬間、赤ん坊がズルッ―――デン、と窓に打ちつけられて、
顔を変形させている・・・。
するすると、戻って、また、ズルッ―――デン・・・。
ズルッ―――デン、しゅるるる・・・。
血が出ている。
どぎまぎしながら、理解する、ブレーキはかかっていない、
だって、車は動いていないから―――。
違うのだ、車は動いていない・・・・・・。
高まりゆく、矛盾、頭の中と視界が一致しない・・・・・・。
、、、、、、
だからそれは―――。
赤ん坊はこちらを見ている、
けれど怖いっていう恐怖はなかった。
不思議と、なかった。
泣き顔をしているように見える、見るからに痛そうだ。
あわただしくも束の間に移ろう。
でも、見ていた、赤ん坊は。
―――こちらを・・。
ハッと助手席に気付くと、血だらけの、
硝子に頭をぶつけたような女性が座っている。
フロントガラスが思い浮かんだ、
エンジン部から流れ出した黒いオイル、脳挫傷・・・。
あの車とそれがどう関係があるのかはわからないけど、
―――耳鳴りがする。
頬が火照ったみたいに、ああ、と思う・・・・・・。
そして、信号が変わる時、確かに、
想像していなかった角度から来るように、
赤ん坊の泣き声が聞こえた。
後ろからのクラクションが鳴る、
前方がいつのまにか大分開いている、
萎縮しながらも、心臓がバクバクしながらも、
膝頭から力が抜けながらも、
アクセルを踏み込んで何とか車を走らせながら、
横を見ると、血の跡もない、当たり前だ、
けれども再整理をしながら別の切り口が見えてくる。
―――破れた木柵、
季節は夏、立ちくらみでも起こして蜃気楼でも見た、
と言いたい気分でしたよ、Oさんが言う。