「上側に腕を構えて顔面に来たパンチをガードするとき、
俺の中の筋肉がスウェイしてパンチを避けて身体を引く」
―――すかさず、阿吽の呼吸。
、、、、、、、、
「ただの弱虫じゃん」
彼は多分、ガードするというのは、
ただガードすることではない、
ガードーディフェンスにも、受け身のようなものがあり、
自然と避けるという本能が練習によって身についている、
という風に語りたかったのだと思うが――。
―――そして、さらに容赦ない、口撃。
「というか、どれだけ腰が引けてるの」
ワラ、、、ワロス、、、
魔法系統と同じように、
笑いも最大進化する、ワロッシュ。
[ナレーション]
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
しかし僕の夏休みのやらしおは全然関係ない。
四面楚歌、というような場面―――。
まず第一に、ビリージョエルのオネスティを、
歌いたいようなこんな場面・・・・・・。
男はしずかに、髪を掻き上げ、
爽やかな薄荷のような不敵な笑いを浮かべて言った。
「――サイレス」
ふぁいなるふぁんたじー、とかいうもので、
てきのまほうを、ふうじる、じゅもん。
[ナレーション]
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
封じるものは悪口ばっかり言っているネトウヨ野郎。
「――ボキャル」
ふぁいなるふぁんたじー、とかいうもので、
てきがとなえた、サイレス、の、まほうを、
うちけす、じゅもん。
「・・・・・・俺って、いぢめられてる?」
「いぢめてない」
でも、いぢっている、ということはできる。
いぢけてみせている、ということはできる。
男たちも時に、女のようにスマートに早変わりする。
「いぢめ、だよね。それ、いぢめ、ですよね。
なぐっていい?
ボクシング、習ってるけど、なぐっていい?」
シュッシュッ―――と、シャドウボクシング用語が出てきた。
実の所、フンフンフンは、ロッキーシリーズの映画に出てくる、
アポロ・クリード用語である。
ちなみに男が、アポロ・クリードについて語る時、
いつも何であんなにボディが湿っているのかが気になると言う。
野生の芳香とでもいうべき火薬の燃焼する臭いに、
男は煙草臭い玉突き屋、ニス臭さ、黴臭い革表紙の辞典を・・、
何故か思い出すと―――言う・・・・・・。
「いぢめてないから、無理」
「いやでも、いぢめですよね、それ、いぢめ、ですよね。
あの、ジャブ、とかいうやつでもいいから」
フッフッ、というシャドウボクシング用語がまた出た。
「でも、すごい風の音するんでしょ?」
彼は、顔をやられキャラ風の、しまりのない顔をうかべながら、
うりゃ、とかいう脱力系の掛け声をし、
へなへなのパンチを繰り出してくる。
肩にあたった。ぽすん、と鳴った。
「ヤバい――折れたかも知れない」
「いやそれ、いぢめですよね?」
[ナレーション]
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
男同士のやりとりはいつも真剣勝負である。
「いや本当に、折れたかも知れない。
病院行くからタクシー代ください」
くっくっく、という笑いがきこえてきたので、よし、とする。
冗談は終わりにしよう。
「でも、敵がサイレスをとなるけど、あれって、白魔法だよね。
白魔法つかえるんだったら、そいつ、敵じゃなくね?」
、、、、、、、、、 、、、、 、、、 、、
そういうふくざつな、つっこみ、しちゃ、駄目。
―――人は時々、安易で単純なツッコミをしながら、
実はクリエーターが何となくそうしたということを、
置き忘れて真面目に考えてしまうのである・・・。
「簡単に言えば、白魔法というのは、嘘なのだ」
、、、、 、、、 、
(というか、おまえ、誰?)
「嘘なんですか?」
「はい、嘘なんです。実はあの、<白>という言葉には、
ばっちい白とか、よごれた白という程度のものなんです。
パンティのみ、清浄ということはあると思います。
でもあとはもう、骨も骨みたいな皮相な形骸」
「まぢで?」
「はい、まぢ、なんです」
男は少し考えてみる。ほんとうにほんとうに、考えてみる。
それはたんにケースバイケースの、いわば何となくの、
口から出任せの、それっぽいだけのような気もしたからだ。
[ナレーション]
完徹という言葉が流行っていた、
それは完全徹夜と呼び習わされた。
夜、眠らないボディは、アポロクリードのように湿ってゆく。
マスタベ、オナソ―――都会の自動開発マシーン・・・。
淋しい―――か。
淋しさ―――か。
「・・・・・・じゃあ、包帯が白いという理由は?」
「――あれは、汚れを吸いこみますよ、という意味なんです」
「まぢで?」
「はい、まぢ、なんです。
本気、と、かいて、まぢ、とよませるんです」
「その、まぢめに?」
「はい、まぢめに、はがいぢめに」
―――男たちはしずかにゆっくりと拳をつきあせながら、
お互いを祝福した、
台詞がピンポン玉のように壁から壁へ響き渡り、
そして河馬になった。