「たとえば恋人っていうのも―――健康になって欲しい、
幸せになって欲しい、家族を増やしたい、そういうことなんだな」
「・・・・・・またすごい薄っぺらいことを言うな、この男。
しかも、森本レオの声真似しながら(?)
―――てか、そう言いながら、
何で当たり前のようにこっちの席に座ろうとしてんの、
太腿つっぱってんだよ、その左腕じゃねえよ、
そのなりふり構わない感じでつっこんでくる、尻だよ、尻」
「ごめん。いや、指定席かと思って、
ポケットには収まらないモンスター的に(?)」
「指定席じゃねえよ、自由席だよ。
てか、大切なのはそこじゃない、幼馴染の距離感を守れよ。
ポケモンはカードならいいんだよ、
カビゴンは可愛いし、ピカチュウは輝いてるからいいの。
向かいの席に座れよ、トイレからさりげなく本当の席に、
戻ってきましたみたいな雰囲気やめろよ」
「でもさ、やっぱり愛があふれているよな、
静岡茶をしばきながらお前を見てるとさ(?)」
「静岡茶の下りはよくわかんないけど、
ドリンクスターにあったのは、
静岡茶じゃなくて爽健美茶だった気がするけど。
てか、さりげなく、
注文しておいたチョコレートパフェを、
こっちに寄せるのやめてほしいんだけど。
買収? ね、それ、袖の下?
そんな低予算のチャーリーとチョコレート工場案で、
愛を語るつもりなの(?)」
「その、なんて言うんだろう、素直で、純粋で、一生懸命で、
思ってること、全部隠せない、
まあ真っ黒な上履きとチョコレートでフォンデュして(?)」
「うるさいよ、なに、その長い下り、
お前の汚い上靴なら解約返戻金が発生するよ、
あと、フォンデュは溶かすって意味だぞ、一番いらないもの、
病原菌のみなもとが、溶かされようとしているぞ(?)」
「バナナも腐りかけが一番美味しい(?)」
「黙れ(?)」
「逃げちゃ駄目だって碇シンジも言った―――ところでさあ、
俺達もう付き合い始めて十年だよな」
「碇シンジの台詞言った意味はさっぱりわからないけど、
それは幼馴染の年数、
あたかも、恋人の年数のように詐称するな。
あと、そのキメ顔、なんか腹立つ」
「どこからどうみてもイケメン俳優」
「そうだな、どこからどうみてもラーメン俳優」
「ラーメン俳優って何だよ! ムカつく。
ああ、つまりスーパーで唐辛子とピーマン間違えたみたいなものか、
あるよな、そういうこと、あるある発見隊、
からの―――あるある八犬伝(?)」
「・・・・・・ファイナルスリル味わう快楽主義者、
修羅場超えて、阿修羅になって、
ドキュンソングのadoのうっせえわ聞き直して、
手に汗握りますね、この試合、どう滑り倒してくれるのか、
寿命が縮まる、伝説作る、
このあらいぐまラスカル―――助かる助かる(?)」
「シーンとしたよ、あのさ、シーンとしたって言ったの、
感動した(?)」
「さいですか(?)」
「てか、詐称なんて人聞きの悪いことを言うなよ、
それは絶対叶えたい夢、羽根も生えて、泳いで、陸上を走り出し、
宇宙を横切っていくような夢(?)」
「スーパートライアスロンだね、その宇宙戦艦ヤマト完結編(?)」
「茶化すなよ、夢が気持ちを上向きにしてくれる、
この気持ち忘れんなよ。生きていてよかった、
今日カレーライス(?)」
「知らないよ、てか、何で言ったの?」
「いや、いつでも同じ釜の飯を食いにきていいんだぞ、
一つ屋根の下で、ほんの小さな出来事に愛は傷ついて、
サボテンの花(?)」
「からの、心にダムはないです(?)
大体ね、親の庇護下にいる奴が何言ってんのよ」
「でさあ、遊園地のチケットあるだけど―――行く?」
「へぇ、ふーん、あのね―――行きゅ(?)」
「待って待って待って―――ちょっと待ってね、
えーと、それって何? 何なの?
遊園地のチケットは欲しいけど、
付き合うのは断固拒むってどういうこと?」
「なんていうんだろう、もう少し考えたい大切なことだから、
弱みも傷口もえぐみも幼さも分け合っていきたい関係だから、
不安や失望や涙も越えていきたい、
そういう―――大事に育てていきたい関係だから、
遊園地のチケットが欲しい、
一緒にジェットコースター乗ろうよ(?)」
「オトナ語? ポエム? 欲望の声はダダ洩れだけど?
さっきまで、何かすごい罵ってきたけど、
え、何そのてのひらがえし?」
「ひ、卑怯だぞ、遊園地のチケットは欲しい、だから欲しい、
それあたしのもの、返せ、絶対行きたい、それわたしのもの(?)」
「あのさ、雑貨屋さんにこんな万引き防止の注意書きがあったんだよね、
“万引きしてオシャレしても心はブスです”ってさ、ね、何か響かない、
ね、何か響くでしょ、いま、どんな気持ち? ね、どんな気持ち?」
「ごめん、あたし、万引きしないから、
ハイリスクノーリターン(?)」
「そういうことじゃねえよ。
ジャイアウーマンの極致だな、まったくこの女ときたら。
で、ライブのチケットもあるんだけど」
「・・・・・・まず、誤解があると思うんだよね、そこ、
訂正したいなって思う、というか―――させてね。
幼馴染っていわば付き合いたてのカップルみたいなもの、
恋人未満友達以上、そういう諺もあったよね(?)」
「ねえよ! さっきまでと言ってることと百八十度違うじゃねえか、
何、改まって言ったけど感出してるの?
あと、急にチョコレートパフェ食べ出すのがムカつく、
何でこれ美味しいなみたいなあざとさ出してんの?」
「・・・・・・照れてたんだよね、わかるでしょ、
幼馴染ってものに胡坐掻いてて、
こんなに大切な人に気付かなかった、
すぐ大人になるよ(?)」
「何それ、何処のJーpop(?)」