リニアモーターカーの話
東京(品川)―名古屋間の開業が待たれるリニア中央新幹線。
静岡県との折り合いがつかないため、
予定していた二〇二七年の開業は遅れそうだし、
そのうえ大阪―名古屋開業は二〇四五年。
ただ、最高時速五〇〇キロで、首都圏と関西圏を、
一時間程度で結ぶ未来の交通機関である。
それこそ、地図の上に定規で線を引いて作ったような道だ。
(正確には、東京・名古屋間を最速四〇分、
東京・大阪間を最速六七分で結ぶ、)
首都圏、中京圏、近畿圏の三大都市圏、
人口約六,六〇〇万人が集積する、
一つの巨大都市圏を形成することで、
広域的な交流が促進され、ビジネスの進め方、
余暇の過ごし方などライフスタイルを大きく変えるだろう。
でも要領を得ないもつれた糸のような事態といえば、
本当にその通りで、
いつ走り出すのか目隠しでもしているようで戸惑う。
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ただ、未来の乗り物というイメージは、
もう完璧になくなっていて、いわゆる時代はもう別のもの、
ハイパーループという、
チューブ内をポッドやカプセルなどと呼ばれる車両が、
空中浮遊して高速移動するところの、
新しい輸送システムが考えられている。
なんでもチューブ内を減圧して真空にすることで、
摩擦抵抗や空気抵抗が抑えられ、
時速一〇〇〇キロを超える移動が可能になる。
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地上の音速旅客機である、
そのうえ、CO2を排出しない、
環境にも優しいといった具合だ。
(なんだか緑色の宇宙人みたいだね、)
そもそも通常の鉄道車両はレールの上を車輪で走行しているのだが、
車輪とレールの接点は走行することで摩擦抵抗が起きるため、
速度向上には限界がある。
(ただ、フランスの“TGV No.4402- 574.8km/h”は、
忘れてはいけない気がする、)
そこで、モーターを開いて直線状にし、
車両には回転子に当たる部分を、
ガイドウェイには固定子に当たる部分を取り付けた。
これにより、車両とガイドウェイの磁石の引き合う力と反発する力により、
推進力を得たのだが、これだけでは、浮上して高速走行はできない。
(この論理的緊張に全体が暗示されてる、)
リニア(Linear)とは英語の「線状にする」の意味で、
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リニアモーターカーは、
直線状にしたモーターを使用した車両のことである。
そこで登場するのが超電導磁石だ。
超電導とは、特定の物質をある一定の温度以下に冷却すると、
電気抵抗がゼロになる仕組みで、
リニア中央新幹線ではニオブチタン合金を液体ヘリウムで、
マイナス約二七〇度に冷やすことで超電導現象を生じさせている。
この超電導磁石を車体に、そしてガイドウェイに、
推進コイルと浮上・案内コイルの電磁石を取り付け、
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反発力と吸引力を発生させるのだ。
時速一五〇キロ以上になると一〇センチ浮上して、
高速で走る。
かれこれ六十年も前に実験が開始して、
(歴史って皺の束だ、長ければ長いほど、
昼の看板のように見えていたものが夜の看板のようになる、)
一九七七年の「浮上式鉄道宮崎実験センター」
一九九七年に、現在の「山梨実験線」で試験が行われ、
同実験線に先行区間の一八.四キロが完成し、
車両も営業車両を意識した従来のものより大型の、
「MLX01」が製造された。
そこから、L0系が登場した、これが本格的用仕様で、
「L」はLinear(リニア)を、
「0」はかつての0系新幹線と同様に、
営業線仕様の第一世代車両という意味があり、
スタートの「0」という意味だ。
L0系登場以降も様々な試験が行われているが、
その内容もこれまでの速度向上だけでなく、
実運行に近い形態で車両性能や環境データも測定している。
二〇一五年四月十四日に行われた走行試験では、
一日の走行距離、四〇六四キロを記録。
さらに同月二十一日に現在の鉄道車両最高速度である、
「時速六〇三キロ(有人運転)」を記録した。
ただ、静岡県とJR東海の間で大井川の水問題などが解決せず、
静岡工区ではまだ着工できていないが、
リニア中央新幹線の問題は直接国民全体に影響しうる問題である。
リニア中央新幹線の開業は、日本の未来を左右する。
どのタイミングでハイパーループが、
現実化するのかはわからないが、
(不確実の雲の中にあるとでもいうべきか、)
韓国鉄道技術研究院は二〇二〇年十一月にハイパーループを、
十七分の一サイズに縮小して造った実験装置で、
時速一〇〇〇キロ超の走行に成功している。
実は二〇一三年にテスラやスペースXのイーロン・マスク氏が、
アメリカのロサンゼルス―サンフランシスコ間を、
ハイパーループで結ぶという構想を発表し大きな話題になった。
現在、世界各国で多くの企業がこの事業に参入し、
研究・開発でしのぎを削る。
本来なら空路で移動すべき長距離区間を、
短時間で移動できるのが、
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ハイパーループの強みだが、
そのような長距離区間に、
チューブを敷設すると多額の建設費用がかかる。
そのため、将来的には大陸を横断するような長距離移動ができるとしても、
まずは近距離から始めるのが現実的だという。
また夢の技術ともてはやす人が多いわけだけれど、
技術的な問題に一切の赤信号はなくとも、
(つまり秩序に形式付与はできても、)
リニアのように工事が思うように進まないなどの問題は出てくる。
また基本的に景気のいい話は信用しない方がいい、
地に足ついた意見をすべきだ。
リニア新幹線工事は、自然の宝庫である南アルプスに、
約二十五キロの長大なトンネルを掘るため、
地下水位の低下や枯渇・河川の減水等により、
南アルプスの高山植物や雷鳥、猛禽類等の生態系が、
破壊される危険がある。
(高速道路建設とか、ダム建設とかよろしくだろう、)
大井川の水が、トンネルに毎秒二トン漏水する結果、
大井川下流域の約六十二万人の飲料水、
農業用水、工業用水に影響を与える。
いざやってみたら、机上の空論とは違うなんて普通にあることだ、
空飛ぶバイクに空飛ぶ車、
自動運転技術があれば酒を飲みながら乗車も可能、
いい時代とはいいつつ、まだまだ先の話のようだし、
どんなに実験やデータを取っていても、
思わぬ事態というのは本当に起こりうる。
かくいう僕の携帯電話も死んだ、
本当に困った人もいればそれほど困らなかった人もいるだろうけど、
(僕は全然困らなかった、それもどうかなあと思うけれど、)
こんなことも起きるのだからということは、
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やっぱり考えておいた方がいいだろう。