koichang’s blog

詩のノーベル賞を目指す、本を出さない、自由な詩人。

イラスト詩「たった一つだけでいい」






甘い心は疲れやすい、
瞑想の形象、
竪琴みたいな音させるカーテン。
だからその体温や、
赤い血が嬉しい、
背後には色と光の青空、
僕等の生命の象徴が、
ひょっこり顔を覗かせる。



感じられるのは
風―――。


平等、価値観、そして時間、
僕等の生活。
ただ静かに、
だけど淋しそうな背中をして。


実家に帰る度に母親が、
スリッパを用意してくれるような、
あの不思議な気分が、
心の奥でちょっと引っ掛かっていて―――。



鳥は巣に帰り、
雲は雨を降らせ、
草は刈られ、
星は遠すぎて見えなくなる。



人を酔わせる香りを放つ、
花―――。


あたたかい布団が恋しい、
三百六十五日、
春夏秋冬、
手をいたずらに伸ばすのはしんどい。

だから僕等は手を繋ぐんだ。
届く距離に、
いつもそこで築くことのできる場所に、
カレンダーや電話やSNSがある。


―――君を思い出す、
空気で身体を洗って、もう一度。



あの頃の空は青く澄んでいて、
そのすべてが愛しくて、
宝箱にそっとしまった、
リリースポイント、
僕のシャッターチャンス。



膨らんで凋むと知っている風船、
鋭くて指を傷つけそうな硝子の破片。

怖いものなんて
何もない。



宇宙だった。
その、すべてだった。
光だった。
いつかの僕には―――。


明日が来ることを恐がる。
明日が来ないかもしれない毎日は、
喜怒哀楽もない、
無気力で怠惰な僕等の愛。


でも、こっそりと見つけてみたい、
人生の意味。


ポエムは日記で、コマーシャルみたいなもの。
頭の悪そうな詩を書けたらそいつが一等賞。
でも、賢さばかり追いかけていた僕にはわかる、
それは不毛な砂だぜ、
失敗しないということではないぜ、
―――なにより、頭の悪い瞬間は平等に訪れる。



勘違いや思い違いが深まりすぎて、
―――本当の良さがわからなくなっているの・・。


どうして南極の氷は溶けるのか、
どうして生物は絶滅するのか、
どうして地球に終わりはあるのか、
どうして僕等は死ぬのか。


払い除けても、
疫病神みたいにさ、
離れていってはくれないもの、
遠く暮れなずむ太陽。


新しい家が建つ、
町の景色は変わる
シンボルタワー、
ランドマークのような大きな木が、
何年も前から、
そう何十年も前から立っている。


僕等は風を待った鳥のように、
その枝の間を抜けて、
根っこのように落ち着ける場所を探して、
歌を歌っているんだ。
その受精と着床のリズムは、
まだまだ仮綴じの本、
人生が昨夜の夢みたいにひどいものでも。


マリーゴールド
ガーベラ・・・・・・。


もう戻れない、
空も飛べない、
これ以上進化しない。
これ以上退化しない。


燃え尽きている、
死んでいる、
崩れずに横たわっている、
それでもまだ答えを探している。


自分で探してみたいんだ、
だからちょっとだって
じっとしていられない・・・・・・。


いつかの声に後ろ髪引かれる、
いつかの自分の若くて熱い気持ちなんかに。


誰かの声が聞こえていた。
そして誰かの顔があった、
誰かとの会話、
誰かの癖、
そんなものが、
ふっと懐かしく、
思い出される。



海の前、
丘の展望台の太陽の前・・・・・・。


隙間風がよく聞こえる、
電子音にすぐ反応する、耳。
かすかな凸凹があって、
これは波長なんだという。


どうしてか、自動改札の前で、
切符を入れて、
呑み込まれて駅員さんが、
来ることがあった。



いまになって思うと、
あれはそういう意味だったのかも―――。




いつか夢の中で僕は思った、
夢の中でこれが夢だと気付いて、
僕はその夢の中で、
もっと夢が見たいと眼を瞑った


ゲームセンターのクレーンゲームに、
ぬいぐるみがいる。
ぬいぐるみは何もしゃべらない、
でもそこに不思議な記号や色や、
匂いや音がある。
やわらかさ。
かわいさ。
それって大変じゃない、
でもご苦労様はえらそうで嫌だから、
お疲れ様と言ってみる。


無敵なんだ。
こちらに気づかずに暮らしている時は―――。


海に潜っている鯨、
空に隊列組んで飛んでいる雀。
排水溝を走り回る狸、
首輪をつけられている犬。

光が揺れ動いて、
ふるえおののくこの淵の上に、
寄り添う蝶、
恋人のシルエットのホモサピエンス


そこにいつか子供が生まれたら、
三人で歩くのかも知れない―――。


ある日まで大人で、
勉強しろと言われていたのに、
子供が生まれたら子供の考えを、
もう一度学ぶことになる、
内部でそれはそうだと汲み取りながら、
ちょっと戸惑ったりするよね、
年齢なんか関係ないと知りながら、
なんだかよくわからない気分で、
怒鳴り散らしたくなるよね。


―――幸せは深いよ。



ここに生きていられることが
堪らなくくすぐったい、
でも今しかない、
この今しかない時間。


咽喉が渇いたから水を飲むわけじゃない、
夏の僕はちょっと飲みたがりなんだ。
暗い所から明るい所へといくまぶしがり。
そして君はなんでもかんでも面倒くさがり。


ある日までボウリング場があったのに、
そこにスーパーマーケットが出来ている。


平和な毎日はありえないほど退屈で、
ドラマチックな要素なんかまったくない、
そんなのを愛せよと言われても失笑する、
なんだったら人生の無駄遣いと本気で言う、
だけど、そんな日が一年の内に、
何度か本当にあるんだ。


どうしても欲しい本があるんだけど、
書店には売ってなくて、
古本屋さんをいくつも回ったんだけど、
見つからなくてさ、
結局諦めてしまった、
そういうことって多かれ少なかれ、
あるだろうって思っていた、
若い時には・・・・・・。



そして今日、僕が会社に入った時から、
ずっと働いていた人が仕事を辞めた。
送別会もなく、挨拶もなかったけれど、
僕はその人のことを最初からずっと尊敬していた。
でもそのことを僕が語ることはもうないだろうし、
それは語らなくてもよいことなのだ。


でもきっとまた僕は思い出す、
思い出の中にその人の影がとどまっているみたいに。


―――人生に打たれる、
雨に打たれる、雷に打たれる、
シャワーに打たれる、夜に打たれる。


うさんくさくて、きれいなこと。
あやしげで、やさしいこと。
どうしようもなくて、せつないこと。



―――ああ、夜が落ちてきそう・・。