*
オーグスケープ
拡張風景―――。
蝙蝠が飛び立つように、眉は動く。
眉間に皺は寄る。
それこそ梯子段でも踏み外したような、
幼稚な嫌がらせだということはすぐにピンときた。
くわっと口を開いて鼠や蛙をくわえた蛇のように、
爬虫類的な本能。
画面の情調が大きな角度でぐいと転回してわき上がる離別の哀愁・・。
こんなおよそ正常ではない場面で、
事実を隠蔽され、歪曲され、
真実が何一つ伝わらないことなんて、
世の中には山ほどある。
自らの肉体を資本とする賃金労働に従事し、
報酬として得た金銭で生命維持、
すなわち資本としての身体を維持し続けているからだ。
では、こいつらはニートなのか?
やぶれかぶれなのか?
社会不適合者なのか?
轢き逃げなんか代表例だろう。
数珠玉のようにつながりながら、この意味のわからない積み木細工現象。
僕は壜の中の蟻を見ているような気持ちがしてくる。
大きく引き寄せてゆくクローズアップと周囲がぼける圧縮効果・・。
微弱な電流が、肌の表面を無数に駆け巡ってくる。分節線。
理由は一切不明だが、滅入った心に閃く。
“車なんかに乗ると優位性を持ったり、
誰かを支配できるとかいう気持ち”になるものらしい。
前に何処かの記事で読んだことがある。
“パワーがあって速い車や車体が大きい車などに乗った場合、
その車の強さを無意識のうちに、
自分と重ね合わせてしまうことがある”らしい、と。
“人間という生理期間の構造に規定された周期性”
“心理的な周期性ならびに環境よる種々の周期性”
―――人格が変わる。
それは本当に脳天から尾骶骨までピーンとくるような感じだ。
(瞳が据わってきて、黒めがちになっただろう、と思う、)
それは凸レンズのように透き、盛り上がっている。
眼に火薬が炸裂したように、僕はもう我を忘れた。
僕はスピードを落としながら、車の助手席の扉をバコバコ蹴って、
「降りて来い」と言った。
漫画だったら一頁に三十コマ以上もあるような細かさ。
一つのシーンを数多くのカメラでさまざまなアングルから撮影するように、
不安の念、緊張の念、移動する眼、警戒する心―――。
運転手がブレーキをかけたタイミングで運転席にまわりこみ、
窓硝子を右拳で叩き割って、そいつの首根っこをひっつかまえ、
足でガンガン窓硝子を割りながら、そいつを引きずり出す。
運転手いれて三人、全員男だったが、
他の奴は身動き一つできなかった。
過激な行動に出る、)
a.タイミングを外さない
b.常に状況を分析する
c.直感や閃きの一瞬を意識する
『年齢』や『体格』ではない、
『度量』だったり、『性格』である。
視線の時系列変化―――。
制限時間内により多くの案件を処理する思考ゲーム・・・。
直流から交流への変換装置―――遠近感の拡大・・。
誰だってそんな気合の入ったやられ方をされたら身動きできない。
闘争は白熱化する、火のような革命的な思想主義者の正論。
複雑な歯車、それでも無意識に求めている選択と許可。
気息音のあとの破裂音―――。
「てめえ何やったかわかってんだろうな!」
コンベクション
対流・・・抽象物の誘導体。文字の屍。
―――蛙に催眠術をかけている大蛇の魔力・・。
、、、、、
――焦点位置を。
[選択範囲]⇒[境界線調整]
――口の中の味、血の味、鉄分、ヘモグロビンの味・・。
遠慮も斟酌もない、早口に叫んだ言葉。
人間の頭蓋骨骨を噛み砕く、肉食動物。
もちろんそんな風に無理矢理引きずり出すものだから、
腹部に刺さった。
苦悶の声が静かな峠の道にピンポン玉のように響く。
既に涙目で、戦意喪失している相手だが、
さらに胸倉を掴んで後部座席にいる連中にも見えるように、
車の硝子に二、三回ぶつける。
その時、鼻が折れたのか出血しているのが見えた。
(ちなみに僕が胸倉を掴まれていたら、その指を折る、)
そのあと、どうにもつなぎ合わせようのない嵌め絵のように、
腕に覚えのある僕は痛めつけた。
(これも日頃の鍛錬の賜物、
殴ったら拳が痛いということも知らない、)
関西風に言うと、シバいた。
憐れな生物のように吐血し、歯が一本折れていた。
電影的な残像をのこしながら、
上腕二頭筋の筋紡錘への振動刺激―――。
―――上半身と下半身、膝の角度、手の力、全体の・・。
「ふが・・・・・・ふごっ・・・・・・」
基本的に、何もしなければ僕は何もしないが、
一度やられたら、眼には眼を、歯には歯を、と考える。
―――暴力が手に負えなくなるのはきっと、
『抑止力』とか『正当な防衛』だとかいう理屈を並べて、
暴力が正義の色を帯びた時だ。
ストレス発散のスポーツ観戦も、きっとそうだろう。
僕はそいつが動けなくなるのを確認したあと、
車の後部座席のドアをバンバン蹴る。
シークエンス アドバンテージ
連続、有利な立場、
能動的騒音制御ー打消し。
クロッキー
速写画。
「おい出てこいや、まだ窓硝子割ってあいつのようになりたいのか」
あきらかに・・・さけがたい―――しょうどう・・。
まったく―――じめいの・・げんり・・・。
・・・句読点。
まるで恐ろしいコンクリート・ミキサーの中へと吸い込まれ――る・・。
頭のネジが百本は外れたようなことを、言う。
おとなしく出てきて、おうそうか、いい覚悟だ、
いまあいつと同じようにシバいてやるからなと思ったら、
>カメラのファインダーが切り取ってゆく。
>下手糞な漫画なら、身体のサイズがいびつになって向かい合う場面。
「勘弁して下さい」「俺達が悪かったです」
と直立不動で、背筋伸ばして言ってくる。
口の中の酸っぱさ、納豆のような粘着。
アクセル操作のレスポンス、点火タイミング―――。
シリンダーとピストンのあいだに隙間ができる・・
予兆もなければ猶予もなく、それにうまく二の句が継げない・・。
>>>自分はそれを認めない。
表情は―――。
表向き、なりゆき、建前、セイフティを外す・・・・・・。
「おいそれ何の漫画だ?」
「へ?」
魚のように口をパクパクとさせている。
一秒か二秒の静かで緩慢な気配が通り過ぎてゆく。
「何だそりゃ、それ全然笑えねえぞ」
とりあえず一人目を顔面パンチで鼻を折る。
ファインダーでフォーカス・ロックするような、眼。
―――新しい状況は、
古い記憶との間に境界をたてる・・。
バタンと後ろに吹き飛ぶ。
イタイタイタイ...
地面にのたうちまわる奴の腹部を思いっきり蹴っ飛ばす。
踵から脛の筋肉―――腹筋、体重を爪先へ・・。
右足と左足によって常に三角形は生まれ続ける。
足の裏に影はつくられてゆく、付け入る隙もなく、
完璧に―――完全に。誘導法。あるいは、盲目の花売り。
「うるせえ」
そんな理屈が通るなら、なんであんなわけのわからないことをしやがった。
ザー・グロー・オブ・ザー・コール
石炭の赤熱。
「お前、ヤクザの事務所に入って、
拳銃ぶっぱなしてその理屈通るか考えてみろ」
、、、、
おいこら。
「通らねえだろ、そんな理屈はよ!
蛇の穴に手を突っ込んで咬まれねえか、考えてみろ!」
もう一人も同じように顔面パンチで鼻を折る。
―――即答。
彼等は“狩る側”のつもりでいたかもしれないが、
たんなる“狩る側の真似事”をしていただけだ。
―――顔面がパンパンに腫れるまでシバいた。
舌の付け根へと落ちてゆく。でも、交通整理は終わっていない。
片方の耳の奥では、動脈の張る音が高く明らかに鳴っている。
「世の中には出会いがしらで包丁を突き立てるアホもいるんだ、
戦争時の囚人施設なんかじゃ、逃走した奴は面白半分に殺された。
俺なんかまだ可愛いもんだろうよ」
二〇一八年の新幹線内殺傷事件、
二〇一九年の川崎登戸通り魔事件。
提案、調整、促進されて、いつのまにかお誂え向きの棺桶が
出来上がっている。
気道の閉塞をした自分のためのアクセルペダル。
ある瞬間に、ふわりと軽いクリームのように思えてくる。
ディペンダビリティ
―――【大規模集積回路】
、、、、、、、、、、、、
でもそういうことではない。
おそらく骨に何か所もひびが入っていただろうと思う。
外堀を埋めて搦め手からの攻めに転じる。
最後にはもう全員、泣き崩れていた。
感傷的な繰り言も、
古いかさぶたのようにぽろりと剥がれ落ちていた。
「いやお前、それぐらいで済ませねえぞ」
僕はそう宣言すると、三人とも正座させ、髪の毛をライターで燃やした。
髪の毛がちりぢりになるまで、続けた。
もはや一人がそれをやられているのを見ながら、
二人はなすがまま見ていた。
抵抗する意欲がないとわかってもなお、僕は止まらなかった。
「時間短縮だ、
お前もお互いの髪の毛をライターで焼け」
もう、無茶苦茶である。でも、やらせた。
「俺が優しいからこんなことで済んでんだぞ。
わけのわからんことをしやがって、
生きているだけで迷惑だ、クソヤロウどもが」
「勘弁してください」
と、財布を出して、土下座して泣きをいれてきたが、
金なんかいらない、金が欲しいのは物乞いや、泥棒である。
「いまになってウジウジムシムシしやがって、てめえらオカマか、
いやオカマだったらもっと上手くやる、お前等はもっと底辺だ、
、、、、、、、、、、
段々いらいらしてくる。
「いまさら何言ってやがる!」
おさまりがつかなかったので、
車に乗り込みアクセルを踏んでガードレールにぶつけて、
ばこばこに壊した。
燃料系、総走行表示―――。
時間は経過しない。しない・・・。ゆらゆ―――ら・・として。
さらに鍵を引っこ抜いて、藪に投げ捨てた。
彼等は地獄絵図を見るようだったかもしれないが、
こういう手合いっていうのは自分がやられないと一生気付かない。
膿んでるんだ、色素が沈殿してるんだ、豚の白いねじれた腸なんだ。
中途半端な奴等ほど増長する。
そしてそのあと、血だらけの運転手の顔面を蹴って、
「次見つけたら、大阪湾に沈めるからな」
と、三十数分にも及んだ、やくざなこと終いをつける。
―――いま、そんなことを思い返しながら、
しびれ薬をしこんだ針のように、
雷に打たれる。
いや、明らかにやりすぎである。
殴るのもどうかと思うが、
別に顔面パンパンに腫らして次の日飯食えなくするぐらいでよかったはずだ。
自分が強いから、相手の理不尽な行動が許せないからという正義を援用して、
一生ものの心の傷を与えようとする。
思春期の時期って生きていくことの必要上から、事務的よりも、
もう少し本能に喰い込んだ協調やらいたわり方を暗黙のうちに交換して、
それが反射的にまで発育している。
その時の自分はそこまで徹底的にやらなければいけなかった。
漠然たる淡いイメージが街並みのしずけさに消えた・・・。
〔早送り〕してしまいたい展開というのがある。
〔巻戻し〕をしたいという展開と同じように。
、、、 、、 、、、、、、、
―――自分も、人も、こんなにも遠い・・・。
見慣れぬ動物の・・・・・・静止状態的報告―――。
見ないようにはしていても、遠い顔がぼやけた視野のなかに動く。
「不意の出来事に驚きあきれて、茫然として見ていたら、
それは済んだことなんじゃないか・・・・・・」
「何もあそこまでやらなくてよかった」
パワーホルダーの一方的な行使という構造。
相手が屑だった、どうしようもない奴だった、
そしてどんな道徳的なきれいごとも、暴力の前では、暴力以上の方法はない。
(僕は今でも、腕立て伏せ、スクワット、腹筋×100は欠かさない、
何事も基礎体力である)
最後は、人の立場に身を置く。誰にも命令はしない。
思考錯誤型の学習。
愛がヒューマン・ドラマで用いられるのは悲しい錯誤。
そして力のない正義は無力だ。
きれいごとだらけのスローガンじゃ人は救われない。
死刑というものだって第一に暴力だ。
ある荒々しい、不自然なもの。
僕等の言葉は入口と出入り口を思い込みで形成しすぎている。
ある一場面と次の一場面との空間的関係を示すような注意。
声が光の筋になって、見えない糸のように思えてくる。
ラベルのつかないばらばらの断片じゃないか、でも・・。
泳いでゆく・・。
――忘れられない夜も、忘れたい夜も・・。
、、、、、、、、、
物質教の迷い子たち。
「もしあの時、車の幅寄せでバイクにあたっていたら―――」
「もしあの時・・・・・・」
、、、、、、、
心が冷たくなる。
何を考えているのだろう、と思う。
でもそう思いながら、
平和的な解決手段をと思ったところで、その時の僕ほどではなくとも、
やっぱりいまの僕もある程度のことはするだろう。
姿勢を観察し、立ち位置を把握し、決意し、行動に移せるまでの時間は、
一秒ですら遅い。電車の席でもし隣の人が包丁で刺してきたら?
渋滞の列で、誰かが拳銃を持って撃ってきたら?
どうして起こらないといえるだろう?
暴力は許さない、警察が守る、自衛はする、正当防衛もする。
屁理屈だ、頭のおかしい奴はいる、そして危害を加えられて泣き寝入りか。
動物が腹が減って動物を食べるのは、本能だ。
でも考えてみればいい、政治に文句をつけるのと同じだ。
政治家を殺してみたらと考えればいい、
全員クズだ、だから左翼だの右翼だのと、
わけのわからないご立派な主張が並ぶんだろう。
国の運営が止まれば凶行の前とは比較にならないほど、
悪い状態が長期に渡って訪れる。
福祉も配分されず、年金生活者も困る。外交もストップする、
企業や大学の研究、道路工事も止まる。
政治に文句をつけるのはいいなんて、
一体誰が言ったんだ?
それは硬度の高い鋼にクロームメッキを施すようなもの。
自分で自分の頭を殴っている、
犬が自分の尻尾を追いかけているのと何が違う?
(国会議員の評価システムを作り、
その評価をする側の評価を作ればいい、
外国人だけの第三者機関を政治的な組織として作ればいい、
政治に国民をあげればいい―――でもそれをやる人間はいない、)
、、、、、、、、、、、、、
じゃあたんなる時間の無駄だ。
頭が良くたって一緒だ、頭のいい人間はそういうのと絶対に関わらない。
時間の無駄は無数の扉を開いているのを見ていない言い訳だとしても。
嫌な汁をいっぱいに含んだ海綿。
濃厚すぎる狂気は8ミリの古惚けたフィルムがかたかた回るように続く。
ひとつの決まり事、複数の決まり事を作っても、
あちらを立てればこちらが立たずといった形になりやすい。
―――枯れ葉がこすれるような乾いた声が洩れる。
、、、、、
息が苦しい。
そのぬるりと顔を出す暴力の影のたくらみは、
いつでも心の底から現れるのだ。
張り詰めた空気の中では、世間の棘をやわらげる包帯は見つからない。
固めた拳は、眼の中のゴミのように目立つ。
規則と連続性、場への介入と枠組みへの問いかけ。
排水溝にミニチュアの廃墟みたいなものを組み立てる、
ストリートアーティストみたいな吸殻がある。
人間に天敵はいないわけじゃない、
自動車とテレビを衝突させるパフォーマンスみたいに、
人間の天敵が、人間になったというだけのことだ。
そして思い出せばそんなこと、何度も何度もあった。
*
*
「人を殴りたいならボクシングをやりなさい」
―――と、いつだったか、ゆかりが言った。
そして僕の頭をポコポコ木魚のように叩くわけである。
それも、十本の指ではおさまらない、
あなたは、ポコッ(?)
本当に、ポコッ(?)
およそ喧嘩で無傷で相手をぶちのめしてきたぜ、
みたいなそのあとに、本当の刺客―――(?)
、、、、、、、
ポコタマシーンと対峙する(?)
そういえば、当初はゆかりの友達の女の子が、
僕にそんなことをしているのを見て、
あわわ、あわわ、と言っていた。
あわわ、って漫画の台詞でしか聞いたことがない。
けれどそんな子にも演技指導はする、ちょっと君、
あわわの時は、口に手をおさえて。
、、、、、、、、、、、、
そしてゆかりにシバかれる(?)
「自分が嫌なことを相手にするのは最低なんだから」
*
We are classmates,
not lovers, and we cannot be friends.
(One secret created a lie,
and the snowball swelled from there.)
*
じゃあ、あなたのそれは何れしゅか?
とか、幼児言葉で言いたい衝動を堪える。
―――交錯した切り合わせ方の呼吸。
でも相手は高校生で、ナイフを持っていた。
しかも、一人じゃなく、複数だった。
けれども、僕はそんなことを言わなかった。
僕は喧嘩自慢がしたいわけではないし、
第一ゆかりの言い分が正論であるのは間違いない。
(群盲象を撫でるに似て、全貌を見渡せない証としても、)
それにゆかりが言ったところで、
僕は僕を変えるつもりなんかさらさらなかったし。
火の粉がかかってきたら振り払う。それだけだ。
でも、秀一やマスターだって言わないようなことを、
ゆかりは僕に言うわけである。
そして、別に女は偉大だなって思うわけじゃないけれど、
この学校の誰もしないようなことを彼女は平気でするわけだ。
、、、、、、、、、、、、、
ポコタマシーンの不良矯正術(?)
彼女は機関車がスクリーンに飛びだすぐらいの美少女で、
(でも、さすがに僕は見なれた、)
繊細なところもあるけれど僕と接する時は、
勝ち気で男勝りで、それから将来女優になるという夢を持っていて、
それに真摯に誠実に努力している。
そして天性のパワハラ気質でバイオレンスを繰り出す、
ポコタマシーン(?)
彼女は美しいと思う、
ピアノの鍵盤をひと撫で、掻き鳴らしたように・・。
そして僕が見る限り、
演技をするうえで一番大切な空っぽを持っていると思う。
平面上にリアルな幻影を出現させる魔術的な力の産物。
インプットやアウトプット、
演技や表現、棒読みとわざとらしさと自然。
舞台的な上手さと、テレビドラマ的な上手さは違うと思う。
色んな考え方があるけれど、
訓練では身につかないものを持っていることを前提として、
人とは違う自分だけの考えを持っていることなんじゃないか、と。
しかしまあ、ふと真兄のことを思う。
ゆかりは優等生で、お見合い写真撮影で要求される、
型通りの髪型や服装をしてる。
頭がおかしい、人と自分は違うってジョジョだ(?)
(でも、自分は素敵と思うから、あなたは素敵っていう、
ポジティブなフィードバックが生まれる、)
「あ・・・・・・」
その時、僕の右手から血が出ているのを見つけて、
眉間に皺寄せて、舌打ちすると、
ジャッジャジャーンなんですよ、お父さん、
ジャッジャジャーンなんですよ、奥様、
それは、
それは、
怪人ゆかまきり(?)
あくのそしき(?)
そしていきなり何の前触れもなく、
頭突きをカマしてきて、え、何するんですか、
これどういう風俗のサービスなんですか、
ゆかりの姉御とかアホなことを言ってみると周囲が笑った。
気合注入、
アッシャース!(?)
使える度 ★★★★★
存在感 ★★☆☆☆
―――笑いの道は厳しい、
それは果てしのない自己採点の道である(?)
ゆかりは、鞄からいそいそと絆創膏を取り出して、
ペタッと貼ってくれる。
僕はフン、とかいう顔を一瞬浮かべてから、
違う違う、絆創膏は、僕の頭に貼ってください、
絆創膏お待ちーいっ、お持ち帰り、違う。ピザ違う。
そんな肉食系表現違う(?)
ね・・・・・(?)
ほらブラックジャック先生みたいになってるでしょ(?)
あと、いまの衝撃でお尻も二つに割れたかもしれません、と言った。
周囲の知り合いが笑っていた。
ゆかりも呆れて少し笑った。
(怒っている人を笑わせるっていいことだ、)
、、、 、、、、、
ここだ、ここなんだ・・!(?)
ふにゃーあっ(?)
酔っぱらってネコ科する霊長類の不思議・・!
ゆかりが眼を丸くして、つんと一瞬堪えたが、
笑い始めた。
(ふっ、本当のプロフェッショナルは、
ギャップ萌えのために社会的死すら恐れない)
あと、もっと丁寧に貼ってよね、
そんなんじゃ全然気持ちよくなんてなれないんだからね、
あれ、ここ風俗じゃないんですか(?)
と、アホなことを言って失笑を誘った。
完璧にセクハラであることは別として、
中学生って小学生の地続きである。
でも不意にゆかりが真顔になった。
こんな時、ちょっとどういう対応をしていいのかわからなくなる。
どうどう・・・・・・どう――ってあたしは馬か!(?)
ハハッ...(?)
なるほどねと言ってみんなは笑ったけれど、
ゆかりは笑わない・・・・・・。
、、、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、
その意味って、いまになるとわかる気もするんだ・・。
「自分が一番痛そうに見えることもあるんだからね、
竜也は喧嘩が強いかも知れないけど、
わたしも秀一君もマスターも別にそんなの一ミリも、
望んでないからね」
、、、、 、、、、、、
ゆかりは、お節介である。
僕が女に手をあげられないのをいいことに、
耳を引っ張ったりもする。
授業中眠っていたら、
シャーペンで容赦なく刺してくるからね。
ポコタマシーン
激しすぎる愛情表現(?)
、、、 、、、、、、、
あなた、お母さんですか?
でもゆかりのことを思い出すと、
ふっと思い出しかけた嫌な記憶が鎮まっていくのを感じた。
世の中には沢山の嫌な奴や馬鹿な奴がいる、
でも、だからって暴力で片付けてはいけない、
自分が嫌なことを相手にするのは最低だ、
本当にそう思う・・・・・・。
、、、、、、、、、、、、、、
ゆかりからメールが入っている。
「色々と言いたいことはあるけど、
とりあえず明日はちゃんと学校に来ること」
自動販売機で携帯を開いてみたらこんなことを書いている。
苦笑する。
やっぱりお母さんだ、と思った。
でもふっと、通りの路肩や足元に目を向ければ、
さまざまな街路樹や海外からの訪問者によって運ばれた、
外来種の草花がある、飛び交う鳥や蝶など、
多種多様な生物、歩道にはアスファルトだけ多様なタイルがあり、
街路樹の下にはいろいろな色や形の土や石がある。
共同体との関わりから得られる複数の視座の探究的実践。
茶化したメールを返そうとして、月影も、星すらも見えない、
空を見上げた。段々薄く、空が明るくなってくるような、
そんな気持ちになった。
ゆかりがあんな風に僕に接するのは、
もしかしたら、僕を特別扱いしないようにしてるポーズかもしれない、
というぐらいにはちゃんと気付いていた。
賢者モード的な歴史観。
眼鏡やコンタクトレンズを外した裸眼で衣服などに顔をグッと近づけ、
繊維の様子を間近で見た時の感覚。あるいはそれは、
アフロフユーチャリズムとかいうやつかもしれず、
『Sun Ra / SPACE IS THE PLACE』を思い出す・・。
(土星人もいるのだ、)
(いき、バイブレーション・・・・・・・
呼 吸。
、、、、、、、、、、、
ポコタマシーンは優しい。
*