部屋の中で一人座っていると、
電気が消える。
声が聞こえてくる。
知らない声だ。
真っ暗闇でもディジタル時計が、
22:10という時間をしらせている。
「動かさないで・・・・・・」
「動かすと、骨折する・・・・・・」
怖くなって叫びそうになる。
いま、“何が起こっているのかわからない”という恐怖から、
―――曖昧なもの、無力なもの、
冷笑的な悪意のこめられたものから脱して、
そこに“知らない人がいる”という具体性を伴いながら、
知り合いでも何でもない、第三者と接点が生まれ、
あたかも自分に言われているという恐怖にすり替わる。
―――心臓がバクバクしながら眼が醒めた。
、、、、、、、、、、、、、
むかではどこにいるでしょう?
消化不良のまま時間が過ぎた。
そして部屋の中で一人座っていると、
やっぱり電気が消えた。
けれど声の主は先程の夢とは違っていた。
真っ暗闇でもディジタル時計が、
22:10という時間をしらせている。
物音が聞こえなかった。
そしてそういえば、この時間だと思い出した。
(思い出す―――ということは・・・)
《脳を強 姦されているような気がする・・》
その時、何故か、
“ご自由にお使いください”と、
樹の下に首吊り用の輪っかと、
その前にある看板を思い描いていた。
気が狂いそうだった。
「・・・・・・ずっと寝ているでしょ?」
「・・・・・・ずっと寝ているから、
立つことも、座ることもできないでしょ?」
眼が醒めることはなかった。
涙が出てきた。
ドアが開いた。
―――光が一瞬人物の顔を濡らした。
それはドアの顔をした人間だった。
歪んだ頭脳の産物―――。
ドアの顔をした人間は、言った。
ディジタル時計が、
22:09という時間をしらせている。
「動かさないで・・・・・・」
「動かすと、骨折する・・・・・・」
「キュルキュル.....」
(巻き戻しのような音が鳴っていた)
「キュルキュル.....」
(巻き戻しのような音が鳴っていた)
ディジタル時計が、
22:08という時間をしらせている。
、、
切断。
暗闇に眼が慣れてきて、
眼を凝らすとドレスを着た二本足が、
くるくると舞踏っているのがわかる。
、、、、
・・・・声が泳ぐ。
「うごかッ―――うごかッ―――うごかッ」
声は何かに引っ掛かったように、
そこから動かない。
空間が合成されて―――イル・・・。
秘密のゲームが始められて―――イル・・・。
「うごかッ―――うごかッ―――うごかッ」
ドレスを着た二本足が動いている。
ふっと怖いことを考えてしま―――う。
そこから上がないかもしれないということを、だ。
「キュルキュル.....」
(巻き戻しのような音が鳴っていた)
「キュルキュル.....」
(巻き戻しのような音が鳴っていた)
くりかえすくりかえすくりかえし。
くりかえしくりかえしくりかえす。
部屋に灯りが付いた。
部屋にあった荷物はすべてなくなっていた。
デジタル時計が、
22:10という時間をしらせている。
ゆっくりと立ち上がった、
―――そこは“自分の部屋”ではなかった。
“ドアノブ”を握って回そうとすると、
ガチャン、という音が聞こえ、
「・・・・・・ずっと寝ているでしょ?」
そうだ、確かにこの部屋には、
クラスメートと来た、肝試しに来た、
三人いた・・・・・・三人いた・・・・・・。
ディジタル時計が、
44:44という時間をしらせている。
、、
切断。