koichang’s blog

詩のノーベル賞を目指す、本を出さない、自由な詩人。

イラスト詩「僕と君が一番欲しいもの」

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「嘘だろ、こ、こんなことってあるのかよ・・・・・・」


キープアウト、差し押さえ。
ドドドドド、とジョジョに出てきそうな擬音が鼓膜へ。
まるで殺人事件の立ち入り禁止だ。
世界がどどめ色だった。
二階建ての小さな家、中古物件の購入、
年数四〇年を越えているくたびれた我が家。
いずれはメンテナンスやリフォームが必要な家。
それでも雨風凌げる、家。


俺は宮沢左京、高校三年生。
生まれてすぐに俺の母親は病気で亡くなった。
それからの人生、父一人、子一人で、
細々と暮らしていたのはつい先日までの、
グランブルーファンタジ・・・からの、
ファイナルファンタジー(?)


今日家から帰ってきたら差し押さえられていた。
事前情報一切なし。
督促状は? 父親に? 
給料が一般的じゃないの?
債務の履行を怠っている債務者に対して、
債権者がその債権の回収を図るための手段。
頭がグルグルした。
心地よい疲れで眠りの森に入って、
気が付いたら化け物の皿の上。
花ある青春。
高校三年生、違法なのかどうかがわからない、
氷のような手が掴みかかる。
いまにも、世界がぐらりと傾きそうだ。
―――断崖を覗き込んだように、戦慄した。


親父が連帯保証人になって、
多額の借金があるのは知ってたけど、
まさか親父の出稼ぎ中にこんなことになるなん―――て・・・。
頭を抱えた。
友達の家へ? それとも、THE・野宿。
IN・公園。気が付いたら星野伸之の、
スローカーブと一三〇キロのストレートによって捻られ、
家の近くの滑り台とブランコと、砂場と、
うさぎのスプリング遊具のある公園へと来ていた。
トイレがない場合、そこは小さい公園だと判断する(?)

障害物が前途に横たわっている、
視野狭窄のように上目遣いで見た木で首吊る想像をする。
でも存外、太くない、これは折れる(?)
しかし、信頼できる親戚もいない。
生活のリズムが狂ってリズム天国しているような街の耳障りな音が、
うるさい(?)


「しかも、肝心の親父と電話がつながらないって、
どうなってんだ・・・・・・」


もしかして人身売買? 
多額の借金背負わされてマグロ漁船に乗る運命?
グルグルして、
魔法陣グルグルした(?)
詰んだ、チェックメイト・・。
なろう小説的、最初だけやりすぎ疑惑。
財布はちょうど、ぼったくり居酒屋。
溜息しか出てこない、生ける屍。
考えるのに疲れてもう自殺を最低でも百回ほど考えたくなっていたら、
クラスメートが共同椅子に座って声をかけてきている場面。


「あれ、宮沢くん? な~にしてるのっ?」
「あ、三井っ・・・・・・」



話しかけてきたのは三井蘭、女みたいな優雅で繊細そうな名前に、
グループ年商数千億で兆にも届きそうな、
バリバリ有名な会社の御曹司。
寝癖直しに川へ来たようなシチュエーション(?)
しかしなんだって、
こんなF大系の底辺公立高校にいるのか全然わからない奴、
いや、金銭面だけではなく有名度だってさらさらない。
カピパラやあらいぐまもいない(?)
百歩譲っても、ホルスタインが放牧するような学校だ(?)
そんな特殊な高校でもない。
挙句、背は低いにせよ少年アイドルで通用しそうな容姿端麗、
つまり美少年っていうことだ。
俺がホモだったら間違いなくカルピス社されているぜっていう、
お前、指綺麗だな、あと、いい尻しているなっていう、
BL物件。いやいやまだまだ、文武両道で、運動神経も抜群。
神様からどれほど優遇されてきたかわからないような男。
なんだったらいま一番会いたくないルサンチマンの敵。
初期ステータスがカンストしてる究極の、
エンジョイガチファーストインプレッション勢、それが、三井(?)


けれど、三井のことを嫌っているのかという―――と、
そういうわけじゃない。
その羨ましすぎる境遇や、孤立無援といったオーラのせいか、
三井の周辺には人がいない。表立ったイジメもないが、
腫れ物扱いというほどでもないが、扱いづらいキャラだ。
まあ、育ちで嫌味なことを言う奴でもない。
きっと両親から厳しく躾けられ、
平凡な高校に入学させられたのだろう的なシナリオ。
そんなポジションだから、いつも一人でいることが多い。
俺も手中学生ぐらいからアルバイトをしていた、
親の同意書や学校の許可がいるが、
新聞配達をしたりしていた事情もあるので、一人の方が多い。
基本的に放課後、つまり学校以外での時間を含められるのが友達だ。
クラスメートは友人にはなっても友達にはまずなれない。

あまりの類似点の無さに最初はドン引きしていたものの、
そんな同じ穴のむじなみたいな三井に近寄って、向かい合う。
何だか恐ろしく小さな公園にいるのが似合わない男だよ、お前は。


「お前こそ、何やってんだよ」
「僕は習い事の、帰りさ」


さらっと言う。
神から与えられた奴、出来る奴は、やっぱり努力も人一倍なのだろう。
ふっと思う、結果を成立させ、完璧な状態を維持するためには、
どれだけの激しい競争と過酷な努力が要求されるのだろう、
それが純粋には楽しめないという気持ちもあるだろうし、
どれだけの人が競争からこぼれ落ちてしまったのだろうかと考えると、
優越感、ルサンチマンだけでは割り切れない人の心の難しさがある、
その過酷で過剰な努力を人に課す世界―――。

もし通常時なら、へぇ何やってんだよ、ぐらいは口が聞けたかも知れない。
でもいまは正直、三井に一ミリの興味もわかない。
プライベートの動かざること山の如し。平常心。
帰れよ、ここは俺の寝床なんだ(?)
同情するなら金をくれとは言わない、
同情するならドミノピザ(?)


「いつもなら車なんだけど、たまには気分転換がてら、
歩きたくなってね、お、公園じゃないかって、
ゆっくりしてたら頭を抱えてる君を見つけたんだよ」


説明タイムは終わり。
しかしピンポイントな偶然もあるものだ。


「それで閻魔大王の腹痛のような顔をして、
あるいは神様の便秘のような顔をして、
君はこんなところで、何をやっているんだ」


こいつに話したところで何か解決するわけじゃないし、
罵詈や痛痒ということもないが、不愉快は残る。
適当なことを言おうと考えるが、何言えばいいかもわからない。
公園にサケ探しに来たんだよ、クマだからな(?)
身をかがめて冷水をかぶる、社会のクマったちゃんなんだよ、俺は(?)
疲れている。


「なになに、もしかして多額の借金抱えて両親が蒸発したとか?」


グサッと刺さった。
ダーツの真ん中であるブルズアイを完璧に射止めていた。
ひとつひとつ区切ってリストアップすることもできない。
取るに足らないと重要だという排他的に二項対立する意味空間。
二の句が継げない刀剣乱舞ONLINE(?)


「さらには家も差し押さえられて、
住む場所も何もかもなくなっちゃった、なんてね」


グサグサッと刺さって、眩暈がし、戦闘能力ゼロ。
最適化されない、土俵際。
地面に蹲った。
三井が、大丈夫かいと声をかけてくる。
ブーッと車が動くような音がした。
出口を見つけた溜まり水が勢いよく流れ出すように、
ゼルダの伝説 時のオカリナ(?)


「なっ、何でわかったんだよ、ていうか、蒸発じゃねえ、
出稼ぎに行った親父と連絡が取れないだけだ。
親父が俺を置いていくわけ―――」
「えっ⁉」


心底驚いたような顔をしているが、取ってつけられた感もある。
洗濯物をバスバスと叩く音が聞こえてくる。


「な、何だよ、その反応は・・・」
「まさか、本当にそんなことになってるとは思わなくて―――」


俺のうっかり屋さん、脳がとろける芳ばしさ、
重さ二一グラムの魂が口からふゆんと抜け出そうになる。
日はすでに傾き、空の淡い青が、
より深みのある青へとゆるやかに推移している。


、、、、、、、、、、、、
自分から墓穴を掘るなんて―――。
早くアニメ化して〜〜〜!(?)
日曜朝八時とかに見た〜〜〜い!(?)


「それにしても、へえ、ふーん、そっか、そっ、かぁ・・・・・・」


表情が変わる猫みたいな瞳。
にやけている、いやもうなんだったら、ニヤケミスチル桜井の本領(?)
ひろゆきと並んで目尻が嫌らしい(?)
でもファンだったらそれが、可愛く見えるらしい。
しかしこいつは、何か顎に指で銃の形を作っている。
何を言うつもりだ。
ふっと思うのは学校の掃除、
様々な理由をつけて帰って行ったクラスメートたち(?)


「なんだよ、他人の不幸は蜜の味ってか、
そういうのよくないぞ、シャーデンフロイデ読めよ(?)
あと、ニヤニヤするのやめろよ、笑顔は優位性ってか、
ああそうかよ(?)
俺は自分のうっかりさん具合に絶望しているんだ、
するりと現れるスルメなんだよ(?)」


ねえ、と言って来る。
それは、胡散臭い話の始まり。
キャラが動いた先に物語が生まれていく。


「・・・・・・そういえばうちの使用人が先週、ひとり寿退社したんだよね」
「だからなんだよ、めでたいことじゃないか、
贈り物は何でもいいけど、お前の家ぐらいなら退職金にイロをつけてやれ、
お世話になった人を大切に(?)」
「ありがとう、そうだねって―――そうじゃなくてさ、
君のその多額の借金返してあげよっか?」
「はぁ? 一体何が目的だよ」


そして始まるBLファンタジア(?)
黄昏時の教室で繰り広げられる禁断のカルマの味、とアホなことを考える。
巨大な要塞のように思える敵だらけの街で、
後頭部をブン殴って気絶させ両手両足を縛り付けて島流しして、
牢獄に閉じ込めて学校という白蟻の塔でカルピス社(?)
もう、俺、作家になろうかな(?)


「言ったろ、使用人が寿退社したって」


そう言って、立ち上がる。
一六〇センチの背の低さ、対して俺は一八〇センチ、
無意識に猫背になって視線を合わせる。
というか、見上げるとか見下ろすとか嫌だから、
座っていいですか、そこ俺の寝床なんで(?)


「辞めたのが僕直属の使用人でね、
早く新しい人を雇いたかったんだ」


ニヤニヤした。
その顔止めろよ、腹立つ。
いま、俺の手にケーキがあったら一撃している(?)
いま、俺の手に猫がいたらお腹の匂いを嗅がせてる(?)
あと、俺の手に甲虫がいたら顔の上歩かせてる(?)


   、、、
―――やめろ(?)


「そういうわけで・・・さ、
君がうちの使用人になって働くなら、
借金返済してあげるよ。悪い条件ではないよね、
さらにうちで働くなら、
衣食住も保証してあげる、授業料とかどうするの?
生活費だって馬鹿にならないよ、
これからお近くの市役所の窓口に生活の相談に行く?
悪くないね、家や仕事を探すサポートをしてくれたり、
場合によっては無料で泊まれる場所を紹介してもらえる、
それとも、住み込みのバイトを探す?
見たところ、青空教室するようだけど―――」
「くっ・・・・・・」


この広告を消すと、次流れなくなるかも知れません、
動画下の青いボタンからレッツラゴー(?)
いまだけの特価、五〇〇円(?)
五〇〇円好きだな、こいつら(?)

ボンボンのこいつから施しを受けるのは癪だ。
奴隷墜ち確定案件(?)
けど、背に腹は代えられねえ・・・。
ピコピコハンマーの正式名称はノックアウトハンマー(?)


「わ、わかった、よ、よろしくお願い致しますっ」


しかし、三井は一瞬ちょっと、ホッとした顔を浮かべ、
手を握ったように見えた、
あれと思った瞬間、豪快な笑い声が聞こえた。
幻覚にも近い異常な没入感。
気のせいだろう―――か。
シャーッ、と自転車が通り過ぎていく音が涼しく聞こえた。


「はっはっは、嫌そうな顔!
でもこれで今日から君と僕は運命共同体だ、よろしくね。
まず、何してもらおっかな」


おいでよ、と優しい声が聞こえた。
そう言いながら、肩に手を掛けてくる。
掌を伝って、脳が理解する。
夢遊病にかかりたくなるような展開ではあるけれど、
不思議と、そんなに卑屈な気持ちにはならなかった。
おそらく、三井の育ちがいいせいだろう。
とはいえ限定的なシチュエーションだけを眺めている、
粗雑な評価プロセスじゃお粗末だ。
―――腹を決めなければ。

その後、リアル金持ち解体新書たる三井の宮殿のような家へ、
リムジンで連れていかれ、
酒の代わりにオレンジジュースいただきました(?)
なあ、リムジンってキャッチボールできそうだな(?)
いやごめん、何でもないんだ、忘れてくれ。
ふふふ、おかしな奴だな、と三井は笑った。
大きな門が勝手に開き、ディズニーランドと何故か思った、
浮世の時間の流れから切り離された独自の非現実的ウラシマ感。
芝生の庭の向こうにも舗装道路は続き、
玄関前で降りた。
そこから松茸生えてそうな森や、ティーブレイクできそうな東屋、
そして肝心の迷路のような洋館といった風情の建物の案内をされ、
俺は契約書にサインをし三井直属の使用人となった。
給料も現状からは破格の条件で、
なんだったら家にいた時より金回りがよくなる格好だった。
三井自身が両親に口添えしてくれたおかげなのだろう。
癪ではあるが、こんな幸運あるもんじゃない。
己が幸運をもたらしてくれた人物に感謝しても罰はあたらない。


とはいえ、仕事は仕事である。
俺の仕事は、学校に通いつつ、住み込みで三井の世話をする。
借金返済と衣食住確保のために、
どんなことでもやってやる!
―――と意気込んだものの、
職場仲間のメイドやコックもいるうえ、
具体的に何をすればいいのかわからず、とりあえず朝を起こし、
身支度を整え、部屋の掃除をし、メイドやコックの手伝い、
といった具合で考えてみることにする。
成績のいい三井の勉強を見てやるとかは不可能だが、
一緒に宿題をやるということぐらいなら出来るかも知れない。
それって必要かなと思うとサインしたのが申し訳なくなる。
労働って対価だ、乞食じゃないから施しは嫌だ、
そりゃ感謝はする、でもそれとこれとは別だ。
努力もできるが、本当に身体が資本以上のことは何も出来ない。
ともあれ、三井と一緒に割と普通なラインナップの、
べらぼうに美味いだけの飯を食べ、
温泉みたいなまったく落ち着けない類の風呂に入り、
今日は与えられた部屋で寝ることになった。
使用人の部屋とはいいつつ、
こんな大きな家なので俺の部屋よりも広い。
ベッドがあり、机があり、寝間着まで用意されていた。
至れり尽くせりすぎて、俺は泊まりに来たんじゃないかと、
何度か誤解しそうになった。
とはいえ、不安は見る見る血のように拡がってゆく。


「んー、今日はなかなか、寝れないなあ・・」


すうっと、窓から月の光が射し込む気配がする。
秋の雲が移り変わるように、静かだ。
カーテンの網目を通過した光の微粒子が、
ベッドの白いシーツを柔らかく浮かび上がらせているんだろう。
風が吹くたびに花びらではなく光が零れ散っていた、
夕方を思い出す。
―――月は曇った真珠貝の破片みたいだ、
きっと、猫の眼のように月が出ているんだろう、
夜が深くなるにつれて煮とろけた檸檬のようになる。


「明日の朝、早いからちょっとでも寝ておきたいんだけど」


眼を瞑ったまま、寝返りを打つ。
ぼんやりとしながらも考える。
相手側の難点、自分側の難点をそれぞれでピックアップし、
責任の大小には触れることなく考えてみる。
生活という、暮らしという、放散する特殊な驚異の触角。
ブック・エンドを不意にはずした書籍。
頭の使い方がそれぞれまったく違うので、
一つで煮詰まったり、飽きたりしても、別の部分に移行する。
それは形もなく重みもない無力感を連れてくる。
血液の動きが遅く鈍くなり、視野にフィルターのような淡い霞がかかり、
手足の関節が気怠く軋む。
この大きな家全体が木管楽器となって悲しげな曲を奏でる。
三井が何考えているのかとか、今日始まった新生活とか、
もちろん借金や、親父のこと・・・・・・。
孤独地獄の闇に閉ざされたように暗く荒涼とした気分・・・・・・。


「(・・・ショックだったのかな―――俺・・・)」


親父と連絡とれないのも、家を差し押さえられたのも―――、
いまでは何だか夢の中の出来事ように思えてくる。
エピソードの順番が微妙に違っていたり、多少の省略があったり、
登場人物の外見的特徴に誤差があったりする。
このまま眼を瞑って嫌なことを忘れて眠り続けられたら、
どんなに幸せだろうか、と思う。
意外と、メンタル弱かったのか、俺・・・。


ガチャッ。
―――物音がした。
身体から火を発したような震えが途端、湧き上がる。
貞子の髪ってトリートメントしたみたいに綺麗(?)
東海道四谷怪談のお岩さんの腫れ上がった顔(?)


「ん? いま、扉あいた、よ、な?」


眼を開けないまま、そう呟く。
何を隠そう、幽霊が苦手(?)
三井はきっといろんな無理難題かぐや姫するわけだ、
女装してイオソのフードコートに立てとか(?)
ヒマラソの雪でかき氷を作れとか(?)
でもそれだって、木綿のハンカチーフプレイよりは百倍マシ(?)
そのマシってわけ、怖いよおおおおお(?)
闇と沈黙の中で湿っぽい草や、黒い樹が、充血し、淡い暈を作り、
甲高い響きの金属弦が宙に響き渡る(?)
ああ、想像力豊かな馬鹿な俺(?)


「え、待って待って、心霊現象があるなんて聞いてない!」


泥棒とかならまだ、物理でどうにかなるけど、
その、カポエラは使えないけど(?)
けど、幽霊は無理、無理、無理だって・・・・・・。
鼻の奥に揮発性有機化合物(?)
淡い青インクの溶液に一日漬けておいてから引っ張り上げたみたいに、
隅から隅まで失敗と敗退と挫折の影が染みついている。
そして、そんな標本みたいな不幸が大好物なのが―――幽霊(?)


ブツブツブツブツ・・・。
何か言っている。超怖い。
これから始まる、絶叫系お化け屋敷ジェットコースター(?)

ブツブツブツブツブツ・・・・・・。
三井の話にはこんな裏があったのだ。
スーパーロボット大戦』シリーズでお馴染みの、
ゲシュペンスト(gespenst)も、ドイツ語で幽霊(?)


うわあああああああ!
なんかぶつぶつ、呟いてるよおおおお!
あまりの怖さにシャットウダウ現実逃避(?)
執着や未練の地縛霊さんですかあああああ!(?)
移動や憑依に制限が無い浮遊霊さんですかあああああ(?)


「ふふふ。君はこれから僕の所有物、少しくらいの、
おさわりはいいよな、くふふ―――」
「うわああああ、幽霊が迫ってきてるんだけど、
足音がギシギシいっていて胸の動悸がバクバクいっているんだけど、
バスケットボールがダムダムいっているんだけど(?)
―――いや、いってないな、
って、このままじゃ憑り依かれる!」


さすがに、幽霊に襲われるのは、ごめんだ!
―――こんな時に念仏が一つも出てこない、
冬のソナタみたいに繰り出されるアビラウンケンソナタ(?)
汎用性が低い、出てきたものはといえば、アブラカタブラソナタ(?)
それ、絶対違うやつ(?)
そして不意に浮かんだ、
ポケモンにとって一番幸せなのは好きな人の側にいられること・・・)
(だったらそのポケモンは君と一緒にいるべきだ)

―――って、幽霊はポケモンじゃねえ!(?)
沼地で暮らす亀の甲羅みたいに、
そんなことを想像しただけで気持ちが暗くなる。


「あああ、悪霊退散‼ 魔剣カラトボルグが欲しい‼(?)」
「―――ねえ、君、悪霊扱いとか、随分ひどいじゃないか、
そんなに僕は君に嫌われていたのかな・・・」


聞き覚えのある、声。
へ、と思い、寝床の傍のリモコンで電気を慌てて点ける。
昭明が浮かびあげたのは三井だった。
予想以上に、ファサファサしちゃってる、髪(?)
ホットケーキする反面、若者はいつだってふわふわのパンケーキ(?)


「えっ、三井、なんでお前がここにいるんだよ。
ここは俺の部屋だろ! それとも、部屋間違えたのか?」
「そうだね、君の部屋だ」
「て、ていうか、おまっ、そ、それ・・・・・・」


誕生日に間違ってパーティードレスで来ちゃったみたいに、
お前どうした(?)
女性用の下着姿、そしてたわわな胸があった。豊胸手術
こいつ実はオネエ系と考えたが、するりと胡散臭く現れる疑問、
エリート男性はストレス軽減のために、
ブラジャーをつけると聞いたことがある、
装着、ああ、まるでピアノの発表会!(?)
実は着け心地がよいんだとかってそういうことじゃねえ!(?)
エヴァの最終回に求めてたようなものってそれは全然、
まったく、つゆほども、一ミリも関係ない(?)
三井が女っぽいことをそれとなく思った。
ただ、男にもああいうキレイ系の顔立ちはいるが・・・・・・。
―――眼が泳ぐ。


「おや、君は一体どこを見ているのかな?
あまり見られると僕でも羞恥心を覚えてしまうね・・・」
「ちょっ、ま、待って、その、むむむむ胸が!」


肝心なことを聞く。
問答無用でマウスピースみたいのを銜えさせられたリングの上(?)


「三井って男じゃなキュて、お、女の子だったのキャか(?)」
「君って可愛いね―――ふふ、でもまあ、
僕に胸があろうとなかろうといまは関係ない、
僕はいま、猛烈に興奮しているんだ、
僕が攻めで、君は受けだ、でもその立場は逆転することもある、
マカ、シトルリン亜鉛タウリン、トンカットアリ(?)
ハイパーセクシイイイイイタアアアアイム(?)
ずっとずっと欲しかった君を、やっと独り占めできるからね、
オットセイハーレムエキスエナジーサイクロン(?)」


ふへっ、と思う。
情緒不安定の、自意識垂れ流し暴れ狂いショートカット(?)
性格最悪エゴの塊ワンマン野郎(?)
生ける攻殻機動隊(?)
―――悪口が、はかどる(?)


「いやいや、待て、待ちなさい、落ち着け、落ち着き給え、
その、待つのだ、待ってください、落ち着けよお(?)」


お前もな、と自分に言いたくなる。
かましすぎるコマ割りと常軌を逸した文字量(?)
ゴアラのマーチ(?)


「興奮するな、聖槍爆裂ボーイ聴きすぎだよおおおお(?)」
「さあ、とりあえず、まずは既成事実を作ろう、
スターウォーズガンダムの観る順番について考えようね(?)」


むちゅーとか言いながら、眼を瞑ってキスしてこようとする。
獣のような声をあげて迫って来るヘンタイという感じだった。
香水の薫りなのか、女の子の揮発性の何かいい匂いがした(?)
神経細胞が瞬間途切れて接着剤される、増設(?)


「まずは、熱いキスから始めよう(?)」


それは南国で始めるやつ、とアホなことを思った。
ロマンスの神様聴きすぎ疑惑(?)
押し返そうとするが、華奢な肩や、自分の身体に胸があたるとさすがにビビる。
それにこういう場面って手が震えるのに、こいつ握力強っ!(?)
男性の貞操っていうのがいま本気で信じられたわ馬鹿野郎っ!(?)
しかし同性相手で無理矢理迫ってきたら殴るが、本気で抵抗するが、
異性相手にそんなことをしようなんて思えない。
―――それになんだ、癪だが、結構いいスタイルしている(?)

「そのあとは僕に任せて、めくるめく愛と官能と背徳の世界へ(?)
初めてだけどね、勉強はしてきた、A Vでね」


、、、、、、、 、、、 、、、、、、、、、、、
あなたの興奮は、絶対に、間違っていると思います(?)


「僕に不可能はないぞ」


不可能ではないけど、マトモでもないぞ(?)
水飛沫のように降りかかる、雌の、禽獣じみた、声(?)
小さく、憐れな、畸形の花のような、括約筋と同じ、唇(?)


「ちゅ~!」


回避しようとしたが、頬っぺたに唇がかすめる。
あと、間違って、胸を鷲掴みにしてしまう。
鬼束ちひろの巨乳疑惑(?)
貧乳はステータスだが、巨乳は正義だ(?)
や・・・わらか―――い(?)
って、何、雰囲気出してるんだ。


「うひゃ、だから、落ち着けってばぁああああああ!」


でもそのようにして始まった二人の生活、
高度な映画的形式で浮び上がる緊張の真っ只中、
まったく眠れない夜の始まり―――だ。
学校のクラスメートには絶対見せない笑顔がこぼれ、
気が付いたら、数知れぬ流れ星がいくつか降り注ぎ、
沢山の願い事が叶ってしまう―――夜。
満月がかかっていて星の間を滑っているみたいに見え、
神様が金魚すくいでもやっているみたい―――だ。