「あーちゃん、ジュラシックパークの、
ティラノサウルスの表現が嘘って聞いたんだけど」
この前、恐竜の本を図書館で借りて、
本を買ったのも聞いたのを覚えているらしい。
何かティラノザウルスのフィギュアを持って来ていた。
学校に余計な物を持ってきてはいけないとは思いはしたけど、
もしかしたらお父さんのものかも知れない(?)
これでは、ゴジラだ(?)
生体力学的研究の結果、
身体を水平に伸ばした姿勢であるとされているし、
この尻尾はしなったと言われている。
もちろん、五十年後、百年後、
その説が覆っていることがないかと言われると、
(というぐらい、覆る可能性がある、)
それはもちろんわからない。
一見もっともそうに聞こえるし、正しいと思われる説でも、
実はそこにも別の考え方があるということもある。
ある程度の嘘と本当を認めながら聞かなくてはいけない。
たとえば、恐竜が生まれたのは三畳紀の半ばで、
(本当に初歩中の初歩の話だけど、)
約二億三〇〇〇万年前。その後、約六六〇〇万年前に、
大量絶滅するまで、およそ一億六〇〇〇万年間も繁栄した、と。
けれども、それも新しい画期的な計測方法で調べてみたら、
ちょっと違うんじゃないか、ということは有り得る。
みんな学者という権威に盲目だ。
三億年前はタリー・モンスターとか、
二メートル越えるヤスデがいたと言う。
そこは後にも先にもないほどの酸素王国で、
原始の森があった。
そこに恐竜はいなかったと思うけど、
恐竜の祖形となるようなものがいた可能性だってある。
わからない―――ということは、ある意味で正しい。
わかる、という中にも、わからないということがある、
というこの意味が、多くの人にはわからないのだから・・。
「まあ、当たり前のことだけど、色がよくわかっていない。
何らかの警戒色をしていたんじゃないかとかいわれているけど、
それもわからない」
「多くは爬虫類の色から取った色彩で、
図鑑は好きにやってるって聞いたことがある。
フィギュアメーカーでは多彩なティラノサウルスが作成されてるよね」
「いっぱいあるけど、ティラノサウルスは牙剥き出しじゃない。
各歯はステーキナイフのようにギザギザしている。
その先端は、当初強い衝撃によってできたヒビ割れと思われていたけど、
これは鞘みたいなもので、歯を折れないようにするためのものだった。
それで、このエナメル質の歯が剥き出しなのは、
ハリウッド的な映像効果の表現で、もしくは不人気だからで、
ちゃんと唇がある、唇がないなら唾液が流れるから、
ティラノサウルスは水の中で生息しなくちゃいけない、鰐みたいに」
一〇~一五センチの歯を保つために唇が必要だった。
いずうさちゃんが、鞄の中から出てきて言った。
ゴジラみたいなティラノサウルスを見て、
「こんなのいたら本当にやられてしまうよな」と言った。
「でも、この生き物は、前脚が小さくて、
何度も鎖骨を骨折させていた、という話があるのよ」
あーちゃんが、いずうさちゃんに、
先生みたいな言い方をする件(?)
「ふうん」
「その前脚は交尾の時に支えるためのものとか、
鋭い爪があってナイフのようなものだったとかあるけど、
いまは、起き上がるためのものだったんじゃないかとか、
肉体のバランスを保つ為だったんじゃないか、という話がある。
だから―――考えようによっては、
ティラノサウルスは、全然無敵じゃなかったかもしれない、
という理屈もある意味では成り立つの」
、、、、
ところで、とあーちゃんが脱線する。
「ラヴクラフトの『彼方より』を下敷きにしたと想われる、
世にも奇妙な物語の『恐竜はどこへ行ったのか?』という、
個人的に好きな作品があるんだけど、
―――ほら、あなたが好きなSCPみたいな話ね、
簡単に言えば異次元に恐竜がいた、それを、まあ、
あることないことそれっぽさを追求して生まれてる(?)」
「人って信じられる情報を優先するから、
あたし達が異次元を行き来するようになったらわからないよね」
「脱線承知でいうと(?)
―――トラヴィス・ウォルトン事件というのがあって、
この人、六日間行方不明になっていて、
UFOに拉致されて、宇宙人を目撃し、大格納庫を見たと言ってる。
でも感覚時間は、二時間程度だって言うのよね」
「あたしも知ってる、面白いよね」
「宇宙人と思われているものが、異次元人で、
いわゆる、アメリカとかがずっと隠していてって考えると面白いよね、
異次元がそういう風に確かめられたら、
どんな生き物がいたって不思議じゃない、
歩く深海生物とか―――もちろん恐竜がいても不思議じゃない。
人類が誕生する前に高度な文明はあったかってたとえば、
考えてみる。これはまずない、だけれど、絶対じゃない。
つまり、恐竜が進化して人類みたいに文明を作った可能性は、ゼロだけど、
そこが、わたし達が観測している地球というこの場所でなかったら、
わからない。最低、恐竜の親戚である鰐や、
鳥の知性は素晴らしいものがある。
そしてもしも、宇宙人と思われているものが、
恐竜の進化したものだったら・・・」
「あーちゃん、夢見がちだなあ」
あーちゃんは、いずうさちゃんに、
少女時代のファンタジーを夢見ており、
その実、あーちゃんは知性で鎧っているけれど、
実は好奇心旺盛な子供(?)
、、、
こほん、とした。
いずうさちゃんが攀じ登って頭に、ふう、と座った(?)
それから、掃除箱に、かもちゃんに出ておいでと言ったら、
バレてたダロと言って出てきた(?)
「その鰐みたいに、低周波音を聴き取ることに長けていた、
と言われている。ティラノサウルスは部分的に鱗があったといわれていて、
ただ、羽毛があったのではないか、
という説もある、これは鳥みたいに」
かもちゃんが、ばさばさと翼を振るってくれた。
「前にティラノサウルスの子供の頃を再現したのがあったけど、
これが、羽毛でおおわれた、ちょっと可愛い生き物だった(?)
部分的じゃないかという説もあるし、羽毛でおおわれていた説もあり、
これもどこかあやしげな話で、
ずっとわからないかも知れないらしいけど、
ダチョウのヒナみたいだったとしてもおかしくない」
そこで一拍置いた。
気が付くと、クラスメートが集まっていて、
先生もいた(?)
「嗅覚も発達していて味覚も感じられた、
新鮮な肉を探した、
トリケラトプス食べる(?)
噛み跡の偏りから、ティラノサウルスが、
トリケラトプスの首の背側の筋肉を好んで、
食べていた可能性が指摘されてるの。
ちなみに肉の風味のほとんどは、脂肪分の組成によって決まるから、
その恐竜が何を食料としていたかが味の決め手となる。
海洋生物を食べている恐竜なら酸化して臭いし、
肉食恐竜は肉が硬い。食べるなら草食恐竜(?)
クローン技術が進めば、恐竜を食べるという罰当たりな時代も、
来るかも知れない」
「グルメだったって話、読んだことあるよ、
あと、痛風になったという話も」
うん、それも本当だ。
赤身肉と内臓肉を多く食していたのだろう、と言われている。
「ティラノサウルスをもし食べるならという話だけど、
一番気をつけなくちゃいけないかも知れない、
寄生虫まみれという話もあるから」
、、、、、、、、、
食の安全って難しい(?)
「食事の際には骨を噛み砕きながら肉を飲み込んでいたんじゃなくて、
肉を骨から剥ぎ取って食べていた、と。
また、飲み込む際には現生鳥類や鰐も採用している慣性摂食法を用い、
剥ぎ取った肉を空中に放り投げてくわえ直していた」
かもちゃんが、学校の椅子をくちばしでくわえて、
頭上に放り投げ、お手玉した。
クラスメート一同、拍手した(?)
そう、そんな感じ(?)
「あとちょっと残酷だけど、
ティラノサウルスがフリルを噛んだり、
引っ張ったりした痕跡があるんだけど、
これは大人のティラノサウルスが、
トリケラトプスの首を切り取る習慣があったからといわれてる。
齧った痕は凄まじい力で引っ張ったどころではなく、
獲物の首を引っこ抜くためのもの」
「それも読んだ、首の背側の筋肉が美味しいんだけど、
邪魔だかららしいね」
かもちゃんが、生物の食事とは残酷なものダロ、と言われた。
前に鳥が育てている卵をよく調べると、
自分の子供ではなかったという話を聞いたけど、
あれって人間が結婚するのも元を辿れば子供を育てるためだし、
(夫婦になって子供を育てて、また別れるペンギンがいる、)
あるいは浮気という考えも、種族維持なら当然だ。
一夫多妻制とか、ハーレムも生物的にはけして不思議じゃない。
(それが社会倫理、道徳的にいいと言っているわけではない、)
、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
ただ、人間が動物であることを否定してはいけない。
手塚治虫の火の鳥では、二十五世紀に文明の絶頂に達し、
それ以降、衰退が始まり、
三十世紀には二十一世紀当時に近い文明になっている。
―――機械、すなわちテクノロジーに依存する社会は、
いずれ、ITに人間的部分を浸蝕される社会になる。
、、、、、、
って何の話だ(?)
「人間の視野角がおおよそ二〇〇度であるのに対し、
犬は二五〇度、羊は二七〇度、鳥は三〇〇度、
牛は三三〇度、アンゴラウサギはなんと三五五度」
「まあ、うさぎは視力は悪いけど、視野は広いから」
ふう、と頭の上に座りながら言う、
いずうさちゃん(?)
「うさぎの眼は横についていて、
後ろから近付いていても気づきます」
、、、、、、、 、、、、、、
もっと聞きたい、うさぎの授業(?)
「それで、ティラノサウルスは、鳥と等しかったと言われてる。
また諸説あるけど、原付バイク並みに走れていた可能性もあるし、
いや、長距離走行に適して全力で走らない可能性もある。
ただ、草食動物の方が速かったのは確かだと思う。
けれど、草食動物を食べた証拠もあるし、
それは顎の力が強大であり、
消化にかける時間が鰐のような爬虫類よりも短く、
むしろ哺乳類や鳥類に近い消化器官を持っていた、
と言われている。
ちょっと脱線するけど、代謝の本質は、
吸い込んだ酸素を化学エネルギーに変えて燃やす効率。
体温を維持して活動するために、酸素を大量に吸い、
たくさんカロリーを燃やす。
余談だけど、強力な咬合力は頭骨に莫大な負荷を掛けるけど、
ティラノサウルスの頭骨は四〇以上のパーツに分かれた上に、
それぞれのパーツに数ミリメートルほどの間隙があり、
この仕組みで負荷を分散させていたみたい。
この咬合力が小さな眼に進化させた、という話もある。
、、、、、、、、、、、、
眼窩が狭いほど強く噛める。
ともあれ、それらの事実から積極的に狩りをして成功していた、
当時の捕食者の頂点だった、というのがわかる。
脱線をするけど、
動物の体重と生息密度には強固な相関関係があることが知られていて、
身体が大きい種ほど個体群密度が低くなる。
これをダムスの法則というんだけど、
その推定をすると、同時期に二万頭、
歴史を通じて二五億頭いたという、
もうおよそアヤシゲな話がある(?)
頭がよくて、これは鳥や鰐の複雑な動きと同じで、
何らかの遊びをしていたんじゃないかといわれている。
けれど共食いする生き物だった証拠もある。
共食いというけど、腹が減ってなのか、配偶行動なのか、
成長段階のものなのかはわからない。
またティラノサウルスが群れで暮らしていたのは知られていて、
怪我していた時は仲間が餌を運んできたというんだけど、
仲間を殺したのか、死んだ仲間を食べたのかはわからない」
と、そこまで話したら、ポンと、右手で肩を叩かれた。
「あーちゃん、教えてよ、恐竜博士になるの?」
、、、、、、、
ニヤニヤされた。
クラスメートも、先生もニヤニヤしていた。
かもちゃんが、「博士」と言われた。
いずうさちゃんも、「博士」と言った。
「がおおおおおお」
と、ゴジラスタイルのティラノサウルスは吠える。
彼女の声帯で。
ティラノサウルスには声帯がなかったので、
そんな風には鳴かなかった。
場合によっては、鳩のように鳴いた。
ただ、あの図体で鳩の鳴き声をされたらショックだろう。
だからそのゴジラサウルスの、
吠える声は、正しい(?)