しっとりと濡れた庭は
その葉を一枚ずつむしりとるかのように
また
根と根がぶつかって
お互いの水気や養分を奪い合うように
( みずかさ ) が増して行く
みずから・・
ああ、あんなこともあった、
こんなこともあった・・
――水嵩は
自分を待ち受けてる思い出を恐れていた
黒い漆となって夜の願望を受け容れていた
凡俗の腸・・たまりにたまったウップン
これからだんだん暖かくなろうよ
( みずけら )
螻蛄が水の中に浮いている。」
「みずけらは死んだクラゲみたいだ・・
――うまくピントが合わない
焦点がぼやけているせいかおぼろな気持ちのせいか
四つ這いになった犬
眼球の表面を刺激され、網膜にまだらな糸
まばらな草むら、野原・・
「そして俺は――プレイ、プレイ・・
危ない!」・・・
ああ、あんなこともあった、
こんなこともあった・・
「そして俺は――プレイ、プレイ・・
月の一部が虧ける
幸福が 我が目の前で 虧けてゆく
庭は感光のプレイ、プレイ
・・・洗濯物に
おおきな窪みがうまれている」・・・
影が うまれている
あの風によって 枝をそよがせている
自分たちの葉を
さらさら いわせて いる・・
プレイ、プレイ
ぷらぷら風鈴が揺れている
ああ、あんなこともあった、
こんなこともあった・・